「ノンアルコールビールって、普通のビールからアルコールだけを抜いて作っているんでしょ?」
そう思っている人は多いかもしれません。
実は、それはノンアルコールビールの作り方のひとつにすぎません。
たとえば、サントリー「オールフリー」は、そもそも発酵させていません。
アサヒ「ドライゼロ」に至っては、麦汁すら使わず、さまざまな香味を組み合わせてビールらしい味を作っています。
一方、「正気のサタン」のように、本当に酵母を使って発酵させながら、アルコールの生成を低く抑える商品もあります。
そして「アサヒゼロ」や「キリン ラガーゼロ」は、いったんアルコールを含むビールを醸造し、その後にアルコールを取り除いています。
つまり、同じように見えるノンアル・低アルコールのビールテイスト飲料でも、そもそもの「味の作り方」が違うのです。
大きく分けると、考え方は3つあります。
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①非発酵
- 発酵させない。味の要素を調合して作る
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②アルコール抑制発酵
- アルコールを抑えて発酵させる
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③脱アルコール
- 発酵させてから、アルコールを抜く
アストローカジャーナルでは、わかりやすいようにこの3つの製法に分類することを提唱します。
この記事では、この3つに分けて、それぞれ何が違うのかを見ていきます。
※製法を比較するため、この記事ではアルコール分0.00%の商品だけでなく、0.5%や0.7%など、1%未満の低アルコール・微アルコール製品も一部取り上げます。これらは0.00%ではありません。
※醸造学では、発酵段階でアルコール生成を抑える「生物学的方法」と、発酵後にアルコールを除去する「物理的方法」という分類がよく使われます。この記事では、一般の人にも味の作られ方が分かりやすいよう、非発酵型・アルコール抑制発酵型・脱アルコール型の3つに整理しています。
1.発酵させない――ビールらしい味を組み立てる
ひとつ目は、非発酵型です。
普通のビールでは、麦汁に酵母を加えて発酵させます。
酵母は糖を代謝して、アルコールと二酸化炭素を作ります。
エステルや高級アルコールなど、ビールの香りを形づくるさまざまな成分も発酵によって生まれます。
非発酵型では、この発酵工程を行いません。
考え方はシンプルです。
アルコールを作ってから減らすのではなく、最初から作らない。
その代わり、原料や香味を設計して、ビールらしい味を組み立てます。
オールフリーは「麦汁まで作って、発酵しない」
非発酵型の代表例が、サントリー「オールフリー」です。
現行のオールフリーは、二条大麦麦芽の一番麦汁とアロマホップを使用しています。
ただし、その先の発酵工程はありません。
サントリー自身も、オールフリーについて「発酵工程のない製造方法」であると説明しています。
大まかに表現すると、麦芽 → 麦汁 → ホップ → 発酵しない → 味を整えるという作り方です。
2026年の刷新後も、発酵工程を使わないという基本的な製法は変わっていません。
※以前、私が飲んだときのレビュー記事は下記に記載しています。
ドライゼロは、麦汁すら使わない
同じ非発酵型でも、アサヒ「ドライゼロ」はかなり違います。
アサヒはドライゼロの開発で、「麦汁を用いない完全調合法」を採用しました。
未発酵の麦汁を土台にするのではなく、ビールに含まれるさまざまな味や香りを分析し、フレーバーなどを組み合わせてビールらしさを作っています。
※以前、私が飲んだときのレビュー記事は下記に記載しています。
非発酵型の難しさは「発酵していないのに、ビールらしくすること」
「調合」と聞くと、実験室で混ぜればできる、簡単な作り方に感じるかもしれません。
しかし、発酵させない以上、普通なら酵母が作ってくれる香味をそのまま利用することはできません。
麦芽、ホップ、炭酸を単純に混ぜるだけでは、「ビールを飲んでいる感じ」になるとは限りません。
発酵に任せていた部分まで、どう設計するか。
発酵由来の複雑な味わいや香りをどう作るか。
これが非発酵型の大きな難しさです。
2.アルコールを抑えて発酵させる――酵母の力は借りる。でもアルコールは増やしすぎない
ふたつ目は、アルコール抑制発酵型です。
こちらは非発酵型と違い、実際に酵母を使って発酵させます。
ただし、普通のビールのようにアルコール度数4%、5%と上がっていくような発酵をそのまま行うわけではありません。
発酵による香味は欲しい。でも、アルコールは増やしすぎたくない。
そこで、麦汁、酵母、温度、発酵時間などを調整し、アルコール生成を低く抑えます。
具体的な方法はいくつかあります。
- 発酵できる糖を少なくする
- 特定の糖を利用しにくい酵母を使う
- 低温で酵母の働きを抑える
- 途中で発酵を止める
複数の方法を組み合わせることもあります。
つまり「アルコール抑制発酵」といっても、単純に発酵時間を短くするだけではありません。
アルコール抑制発酵については、下記の記事にて詳しく解説しています。
正気のサタンは「短期間の発酵」
日本で非常に分かりやすい例が、ヤッホーブルーイング「正気のサタン」です。
アルコール分は0.7%。
ヤッホーブルーイングは、通常のビールづくりでも使用している「ベルジャンアードネス酵母」を採用し、アルコールを抑えるための短期間の発酵でもビールらしい香りを作れるよう設計しています。
さらに、麦芽量や温度なども調整して発酵を管理しています。
ここで面白いのは、開発時に実際に起きた問題です。
発酵を短時間で止めると、糖の分解が十分に進みません。
すると、「水っぽい」「甘い麦汁感が残る」といった問題が出ます。
正気のサタンでは、小麦やオーツ麦、麦芽量、温度管理などを調整して、この問題への対策を行っています。
※以前、私が飲んだときのレビュー記事は下記に記載しています。
CIRAFFITIは「アルコールを作りにくい酵母」を使う
同じ制限発酵でも、CIRAFFITIは別のアプローチを採っています。
CIRAFFITIは、発酵してもアルコールが発生しにくい特殊な酵母を使っていることを公開しています。
さらに発酵日数、温度、レシピも調整し、アルコール分を1%未満に抑えています。
正気のサタンが「発酵する時間を短くする」ことを重要な手段としているのに対して、CIRAFFITIでは「どんな酵母に発酵させるか」も重要なポイントになっています。
同じ制限発酵型でも、方法はひとつではありません。
※以前、私が飲んだときのレビュー記事は下記に記載しています。
アルコール抑制発酵型の難しさは「発酵したい。でもアルコールは作りたくない」
アルコール抑制発酵型が狙っていることは、かなり矛盾したことを実現しようとしています。
- 酵母には働いてもらいたい
- 発酵による香りも欲しい
- 麦汁っぽさも減らしたい
- でも、アルコールは増やしたくない
発酵を進めれば、普通はアルコールも増えます。
逆にアルコール生成を強く抑えれば、発酵不足による甘さや麦汁由来の香りが残りやすくなります。
発酵のメリットを使いながら、アルコール生成だけをどこまで抑えられるか。
これがアルコール抑制発酵型の難しさです。
また、発酵をするため、完全な0.00%アルコールにするのが難しいのも、根本的な難しさです。
なお、具体的に数字として調査したわけではなく、私の調査と飲み比べした結果の印象なのですが、現在のプレミアム価格帯の微アルコールビール、特にクラフトビール系のビアスタイルにおいては、この製法が主流になりつつあると感じています。
3.発酵させてから、アルコールを抜く
3つ目が、脱アルコール型です。
まず、アルコールを含むベースとなるビールを醸造します。
酵母に発酵してもらい、アルコールだけでなく、ビールらしい発酵由来の香味も作ります。
そのあと、出来上がったビールからアルコールを取り除きます。
一般の人が「ノンアルコールビールの作り方」と聞いたとき、最も想像しやすいのがこの方法でしょう。
脱アルコール製法については、下記の記事にて、詳しく解説しています。
アサヒゼロは、一度ビールを醸造してから0.00%にする
「アサヒゼロ」は、この方式です。
アサヒは、一度ビールを醸造した後にアルコール分を取り除く「脱アルコール製法」で0.00%にしています。
2026年8月に中味が刷新されましたが、現在も脱アルコール製法であることは変わっていません。
※以前、私が飲んだときのレビュー記事は下記に記載しています。
キリン ラガーゼロも、ラガーを醸造してから抜く
「キリン ラガーゼロ」も分かりやすい例です。
まず下面発酵と貯蔵・熟成を行い、ラガータイプのビールを醸造します。
その後、専用の脱アルコール設備を使ってアルコールを取り除き、0.00%にしています。
※以前、私が飲んだときのレビュー記事は下記に記載しています。
ここまで聞くと、「それなら、一度ちゃんと発酵させる脱アルコール型が、一番ビールに近くなるのでは?」と思うかもしれません。
ところが、そう単純でもありません。
脱アルコール型の難しさは「アルコールだけを抜きたいのに、香りも抜けること」
アルコールを除去するとき、ビールの香りまで一緒に失われることがあります。
ビールのフルーティーな香りに関わるエステルや高級アルコールなどの揮発性成分は、蒸留や膜分離などの脱アルコール工程で減少することがあります。
2023年の包括的レビューでも、物理的な脱アルコール法では、エタノール除去と同時に望ましい香気成分が失われることが重要な課題として整理されています。
つまり、せっかく発酵で良い香りを作ったのに、アルコールを抜くときに、その香りの一部まで失ってしまうという問題があります。
そのため脱アルコール型でも、ベースとなるビールの設計や、香気を残す・回収する技術などが重要になります。
結局、どの製法が一番おいしいのか?
ここまで見ると、「結局、どの製法が一番おいしいの?」という疑問が出てきます。
結論は、製法だけでは味は決まりません。
3つの方法は、それぞれ別の難問を抱えているからです。
| 製法 | どう作る? | 強み | 大きな課題 |
|---|---|---|---|
| 非発酵型 | そもそも発酵させない | 0.00%にしやすい。香味を細かく設計できる | 発酵由来の複雑さをどう作るか |
| アルコール抑制発酵型 | アルコール生成を抑えながら発酵 | 発酵由来の香味を利用できる。脱アルが不要 | 発酵不足とアルコール生成のバランス |
| 脱アルコール型 | 発酵後にアルコールを除去 | 通常に近い発酵を利用できる | アルコール除去時に香味をどう残すか |
- 非発酵型は、「発酵していないのに、どうビールらしくするか」を解かなければなりません。
- アルコール抑制発酵型は、「発酵による香味を作りながら、どうアルコールを増やさないか」を解かなければなりません。
- 脱アルコール型は、「十分に発酵させたあと、どう香味を残してアルコールを取り除くか」を解かなければなりません。
どれかひとつが「本物」で、残りが簡易的な方法というわけではありません。
それぞれ、違う難問を解いている。
そして同じ製法の中でも作り方は違います。
オールフリーとドライゼロは、どちらも発酵させていません。
それでも、片方は麦汁を土台にし、もう片方は麦汁を使いません。
正気のサタンとCIRAFFITIは、どちらも発酵を利用します。
しかし、アルコールを抑える方法は同じではありません。
だから、同じ「ノンアル」「低アル」と書かれていても、商品によって味が大きく違うのは不思議ではありません。
アストローカは「非発酵型」に近い方法を選んでいます
私たちアストローカが開発している0.00%のクラフトビールテイスト飲料は、今回の3分類では非発酵型に近い方法です。
アルコールを含むビールを造ってから脱アルするのではなく、発酵に大きく頼らず、素材と香味設計によってクラフトビールらしい満足感を作ろうとしています。
この製法は、発酵によって自然に生まれる複雑さを、発酵に頼らずどう作るのか。という難しさがあります。
日々、試作を繰り返しながら、頭を悩ませています。
それでも、0.00%を維持しながら、香り、苦味、酸味、ボディ、後味をどう設計するか。
アストローカが選んだのは、この難問です。
まだ開発途中ですが、0.00%でどこまでクラフトビールらしい満足感を作れるのか。
引き続き試作を重ねています。
ノンアルの作り方は、一つではない
ノンアル・低アルコールのビールテイスト飲料は、すべて同じ方法で作られているわけではありません。
大きく分ければ、
- 発酵させない
- アルコールを抑えて発酵させる
- 発酵させてからアルコールを抜く
という3つの考え方があります。
そして、どの製法にも得意なことと難しいことがあります。
次にノンアルコールビールを飲むときは、「これは、どうやってビールらしい味を作っているんだろう?」と製法にも注目してみてください。
同じノンアルでも味が大きく違う理由が、少し見えてくるかもしれません。
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参考資料・出典
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サントリー「『オールフリー』は、本当にアルコールゼロですか?」
発酵工程を使用しないことの確認。 サントリー お客様センター -
サントリー「オールフリー」公式サイト
現行商品の一番麦汁、アロマホップ等の使用について。 オールフリー公式サイト -
アサヒグループ「ノンアルコールビールテイスト飲料の開発」
ドライゼロの「麦汁を用いない完全調合法」と香味設計について。 アサヒグループ研究開発 -
ヤッホーブルーイング「正気のサタン」開発資料
ベルジャンアードネス酵母、短期間発酵、麦芽量・温度管理、水っぽさ・麦汁感への対策について。 ヤッホーブルーイング「正気のサタン」 -
CIRAFFITI「QUALITY」
アルコールを生成しにくい特殊酵母、発酵日数・温度・レシピ設計について。 CIRAFFITI QUALITY -
BRULO日本公式サイト/FAQ
「後からアルコールを抜かず、発酵過程で0.5%」という製法、および2026年の0.5%への変更について。 BRULO公式サイト BRULO FAQ -
アサヒビール「アサヒゼロ」2026年8月20日ニュースリリース
一度ビールを醸造した後、アルコール分を完全に取り除く脱アルコール製法について。 アサヒゼロ 2026年リニューアル -
キリン「ラガーゼロ」公式サイト
下面発酵・熟成によるラガータイプのビール醸造後、専用設備で脱アルコールする工程について。 キリン ラガーゼロ -
Piornos JA, et al. (2023), “Alcohol-free and low-alcohol beers: Aroma chemistry and sensory characteristics”
非/低アルコールビールの製法、発酵香、脱アルによるエステル・高級アルコール等の損失を包括的に整理したレビュー。Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety, 22, 233–259. 論文全文(Wiley) -
Yabacı Karaoğlan M, Dostálek P. (2026), “Application of unconventional microorganisms for the production of non-alcoholic beer”
biological / physicalの分類、麦汁発酵性の制御、コールドコンタクト、制限発酵、特殊酵母など現在の生物学的方法を整理したレビュー。 論文全文(Frontiers)