ソバーキュリアスとは?「あえて飲まない」だけではない本来の意味

公開: 更新: 執筆・編集: アストローカ創業者

「ソバーキュリアスとは、飲めるけれど、あえてお酒を飲まない人のこと」

日本では、そう説明されることがよくあります。

大きくは間違っていません。ただ、この説明だけでは「Sober Curious(ソバーキュリアス)」という言葉の面白さを少し取りこぼしています。

この言葉を生み出した作家・ジャーナリストのルビー・ウォリントンは、ソバーキュリアスについて、自分とアルコールとの関係に好奇心を持つことだと説明しています。

  • 「なぜ、自分はお酒を飲むのか?」
  • 「どんな場面で飲みたくなるのか?」
  • 「飲むことで、自分はどう感じるのか?」
  • 「周囲から、飲むことを期待されていないか?」

こうした問いを自分に向けてみる。

つまり、ソバーキュリアスの出発点は「酒をやめる」ことではありません。


これまで何となく選んでいた一杯を、一度自分で選び直してみること。

その結果、飲まなくなる人もいれば、飲む量を減らす人もいます。場面によってアルコールを飲む日と飲まない日を分ける人もいるでしょう。

「飲む人」から「飲まない人」へ移るための運動というより、自分は酒とどう付き合いたいのかを考えてみる姿勢。

それがソバーキュリアスです。


ソバーキュリアスとは?

「Sober Curious」は、

  • Sober=しらふ、酒を飲んでいない状態
  • Curious=好奇心を持つ

を組み合わせた言葉です。


ルビー・ウォリントンは2015年ごろから、自身がアルコールに感じていた違和感について公に語り始めました。

「Sober Curious」という言葉を作ったのは2016年とされ、2018年には同名の著書『Sober Curious』を出版しています。

日本では2021年に『飲まない生き方 ソバーキュリアス』として翻訳されました。


ルビー自身は、いわゆる「普通の社交的な飲み手」でした。

仕事でもプライベートでも酒を飲み、週末にはバーやクラブへ行く。それでも、自分の飲酒に対する疑問が消えなかったといいます。

  • なぜ飲むのか
  • 何を期待して飲むのか
  • 本当は何を求めているのか

ルビーは、こうしてアルコールとの関係を観察する姿勢に「Sober Curious」という名前をつけました。

ここが重要です。


ソバーキュリアスは、最初から「お酒をやめる」と結論を決める考え方ではありません。

まず、問いを持つ。

そこから始まります。


「飲めるけれど、あえて飲まない」だけでは少し狭い

日本ではソバーキュリアスについて、

  • 「お酒を飲める人が、あえて飲まないこと」
  • 「健康のためにお酒を飲まないライフスタイル」

と説明されることがあります。

検索者に一言で意味を伝えるには分かりやすい表現です。


ただし、これだけを読むと、ソバーキュリアス=酒を飲まない人のようにも見えてしまいます。

ルビー本人の説明は、もう少し柔軟です。


2024年に行われた日本でのインタビューでは、完全に飲まなくなる人もいれば、飲む量を減らす人もいると説明しています。そして、そこに正解・不正解はないとしています。

実際、ルビー自身も『Sober Curious』を書いた2018年当時は、まだ完全に酒をやめてはいませんでした。


自分とアルコールとの関係に疑問を持ち、飲まない生活について情報を集めながら、自分なりの答えを探していたのです。

その探求を続けた結果、現在のルビー自身はアルコールを必要としなくなったと話しています。

しかし、それをすべての人のゴールにはしていません。

つまり、

  • 平日は飲まないが、週末は飲む
  • 翌朝早い日は0.00%を選ぶ
  • 飲み会には行くが、飲みたくない日は飲まない
  • 普段は飲まないが、気になるクラフトビールは飲む
  • 「今日は酔いたくない」と思った日はノンアルコールを選ぶ

といった付き合い方も考えられます。

ソバーキュリアスの特徴は、「何日飲まなかったか」よりも、自分の飲酒を当たり前のようにルーチンワークにしないことにあります。

禁酒・断酒・減酒との違い

ソバーキュリアスと似た言葉を整理すると、違いが分かりやすくなります。

考え方 中心となるもの
禁酒・断酒 酒を飲まないこと
減酒・節酒 飲む量や頻度を減らすこと
ソバーキュリアス 自分と酒との関係を問い直すこと

実際の行動は重なります。

ソバーキュリアスを試した結果、減酒することもあれば、最終的に酒を飲まなくなることもあります。

逆に、考えたうえで「この一杯は飲みたい」と選ぶこともあるでしょう。

ソバーキュリアスの特徴は、特定の飲酒量をゴールにすることよりも、「なぜ飲むのか」という問いから始まることです。


「みんな飲むから飲む」を一度だけ疑ってみる

ソバーキュリアスという考え方は、日常生活に当てはめると分かりやすくなります。

  • 金曜日だから、ビールを飲む
  • 仕事が終わったから、飲む
  • 焼肉だから、生ビールを頼む
  • BBQだから、飲む
  • 飲み会だから、とりあえず最初の一杯を注文する

どれもごく普通の行動です。

そして、別に悪いことでもありません。


ただ、そこに一つだけ問いを差し込みます。

「ところで、今日は本当にアルコールを飲みたいんだっけ?」

  • 飲みたいなら飲む。
  • 今日は別にいらないと思えば、飲まない。

ルビーの公式サイトでは、『Sober Curious』の中心的な問いの一つとして「オートパイロットで飲むことをやめたら、人生はどう変わるだろう」という問題提起がされています。

この「オートパイロット」という表現は、ソバーキュリアスをよく表しています。

お酒を禁止するのではなく、飲酒のオートパイロットを一度解除する。

そのうえで、今日は何を飲むのかを決める。

それだけでも、酒との付き合い方はかなり変わります。


なぜソバーキュリアスが広がっているのか

背景には、健康への関心だけでなく、「飲まないこと」を取り巻く社会の変化があります。

米国心理学会(APA)は2025年、ソバーキュリアスについて、アルコールに問題があると考えていない人でも、自分の飲酒との関係を見直しやすくする動きとして紹介しています。

これは重要な変化です。

酒をやめたり減らしたりすると、

  • 「何か問題があったの?」
  • 「体を壊したの?」
  • 「酒が飲めないの?」

と聞かれることがあります。


つまり、「酒を飲む」が標準で、「飲まない」側には理由が必要だったわけです。

でも実際には、

  • 「明日の朝をすっきり迎えたい」
  • 「今日は酔いたくない」
  • 「最近ちょっと飲みすぎている」
  • 「別に今日は酒じゃなくていい」

程度の理由で飲まない日があっても不思議ではありません。

APAの記事では、こうしたソバーキュリアスの広がりが、「酒に問題がある人だけが飲むのをやめる」という見方を弱める役割を持つことが指摘されています。


アルコール依存症ではない。

酒を完全にやめたいわけでもない。

でも、自分の飲酒について少し考えてみたい。

ソバーキュリアスは、これまで名前のなかったこの中間領域を表現しやすくしました。


日本では、言葉そのものはまだあまり知られていない

日本で「ソバーキュリアス」という言葉は、まだ広く知られているとは言いにくい状況です。

JTBパブリッシングが2024年12月にWebメディア閲覧者536人へ実施した調査では、「ソバーキュリアスを知っていて、意味も理解している」と答えた割合は、男性7.9%、女性4.6%でした。

ただし、この調査は旅行への関心が高いWebメディア閲覧者を対象としているため、日本人全体の認知率を示す数字ではありません。


一方で、

  • 「明日は早いから今日はノンアル」
  • 「飲み会には行くけれど今日は飲まない」
  • 「普段は飲まないけれど、好きな酒は飲む」

といった行動そのものは、珍しいものではなくなっています。

つまり、「ソバーキュリアス」という名前を知らないまま、ソバーキュリアス的な選択をしている人もいるわけです。


ソバーキュリアスを試すなら、まず「なぜ?」を聞いてみる

ソバーキュリアスに資格も認定もありません。

いきなり1か月酒を断つ必要もありません。

次にお酒を手に取るとき、一度だけ立ち止まってみるところから始められます。


1. 「今日はなぜ飲みたい?」と考える

例えば、

  • ビールの味が飲みたい
  • 食事に合わせたい
  • 酔いたい
  • 仕事が終わった合図にしたい
  • ストレスを感じている
  • 周りが飲んでいる
  • 何となく毎日そうしている

同じ「ビールを飲みたい」でも、その理由は毎回同じとは限りません。

2. 一度、飲まない方も試してみる

永久に飲まないと決める必要はありません。

一晩でも、一週間でも構いません。

「我慢できたか」を採点するのではなく、飲まなかったときに自分がどう感じるのかを観察するのがソバーキュリアスらしい試し方です。


3. 飲んだ日との違いを見てみる

  • 翌朝の気分
  • 睡眠
  • 夜の過ごし方
  • 食事
  • 満足感
  • 人付き合い

意外と変わらないかもしれませんし、何か違いを感じるかもしれません。

「やっぱり、この場面では酒を飲みたい」と思うかもしれない。

それも一つの答えです。

最初から正解を決めないからこそ、“Curious”なのです。

 

ノンアルコール飲料は「飲む体験」と「アルコール」を分けられる

ソバーキュリアスの広がりとともに、ノンアルコールビールやモクテルなどの選択肢も増えています。

ただし、ソバーキュリアス=ノンアルコール飲料を飲むことではありません。

ノンアルコール飲料は、選択肢の一つです。

例えばビールには、

  • 香りや苦味を味わう
  • 食事に合わせる
  • グラスへ注ぐ
  • 乾杯する
  • 一日の終わりに一杯飲む

といった体験があります。

これらすべてが、アルコールそのものによって生まれているわけではありません。

0.00%のビールテイスト飲料なら、ビールらしい飲用体験とアルコール摂取を切り離すことができます。

 

「ビールは飲みたい。でも今日は酔いたいわけではない」

そんな日に、アルコールを含まない一杯を選べる。

選択肢が増えたこと自体が、ソバーキュリアスを実践しやすくしているとも言えます。

 

ソバーキュリアスは「酒を嫌いになる運動」ではない

ソバーキュリアスだからといって、酒を嫌いになる必要はありません。

  • お酒には味があります。
  • 料理との組み合わせがあります。
  • 造り手の工夫があります。
  • 友人と酒を囲む時間もあります。

そうした価値を認めることと、自分の飲酒を問い直すことは両立します。

実際、ルビー本人も、ソバーキュリアスの結果は人によって異なっていいと説明しています。

 

だから重要なのは、「酒を飲む人」と「酒を飲まない人」のどちらが正しいかを決めることではありません。

  • 自分は今日、なぜ飲むのか。
  • 今日は本当にアルコールまで欲しいのか。

それを自分で考えられることです。

 

ただし、アルコール依存症の治療とは別の話

ソバーキュリアスは、自分の飲酒習慣を見直すための考え方です。

アルコール依存症の治療法ではありません。


飲酒を自分でコントロールできない、酒を減らしたときに離脱症状が現れる、といった場合は、「まず自分で少し飲まない日を作ってみよう」という話とは別です。

医療機関など専門家への相談が必要になります。

 

「飲むか、飲まないか」ではなく、自分で選ぶ

ソバーキュリアスを、「飲めるけれど、あえて飲まないライフスタイル」と説明することはできます。

ただ、その一言だけでは少しもったいない。

 

この言葉の中心にあるのは、「なぜ自分は酒を飲むのか?」と、自分とアルコールとの関係に好奇心を向けることです。

その答えは、人によって違います。

酒を飲む夜があってもいい。

飲まない夜があってもいい。

 

普段は0.00%を選び、本当に飲みたい一杯だけアルコール入りを選ぶ人もいるでしょう。

次に何となく冷蔵庫を開けたとき、一度だけ自分に聞いてみる。

 

「今日は何を飲みたいんだろう。アルコールまで欲しいんだろうか?」

そこから、ソバーキュリアスは始まります。

 

なお、著者の飲酒についての考え方は、下記の記事に記載しています。

▶ビールは好きだ。でも、アルコールが好きなわけではない。

 

参考文献・主要資料

  • Ruby Warrington『Sober Curious』

  • Ruby Warrington『The Sober Curious Reset』

  • DIG THE TEA「『ソバーキュリアス』本来の意味、知ってる? “生みの親”が『お酒を飲まない』を探求して見つけたこと」

  • DIG THE TEA「Z世代『お酒にメリットを感じない』、ソバーキュリアスへのシフトがもたらすアルコールフリーの最前線」

  • American Psychological Association “‘Sober curiosity’ destigmatizes the desire not to drink”

  • Alcohol and Drug Foundation “What is ‘sober curious?’”

  • JTBパブリッシング「『ソバーキュリアス』時代が到来!」

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと依存」

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