Dry Januaryだけじゃない。世界の「1か月お酒を休む」文化を調べたら、国によって月が違った

公開: 更新: 執筆・編集: アストローカ創業者

「1月は、お酒を飲まない。」

海外には、そんな習慣があるらしい。

Dry January(ドライ・ジャニュアリー)と呼ばれる、1月の1か月間だけアルコールを飲まずに過ごすチャレンジです。

年末にクリスマスやパーティーを楽しんだあと、新しい年の始まりに一度お酒から離れてみる。

なるほど。分かりやすい。


ところが調べてみると、世界の「お酒を休む月」は1月だけではありませんでした。

2月に休む国もある。7月もある。10月もある。11月もある。

しかも、同じ国で複数の「お酒を休む月」が存在した例まであります。

いったい、何月に休むのが正解なのでしょうか。

世界の事例を、国ごとに調べてみました。

 

イギリス:最も有名な「Dry January」

世界でもっとも知られているのが、イギリスのDry Januaryです。

現在キャンペーンを運営するAlcohol Change UKによると、そのきっかけは2011年。

Emily Robinsonという女性が、2月に出場するハーフマラソンのトレーニングのため、1月だけお酒をやめました。

翌年、彼女がAlcohol Change UKに加わり、「一定期間お酒を休むこと」について多くの人と話すようになります。

そして2013年、約4,000人の参加からDry Januaryが正式にスタートしました。

2025年には、公式プログラムを利用して世界で約20万人が参加する規模になっています。


Alcohol Change UK自身も、Dry Januaryの背景として、クリスマス後に一度お酒から離れることを挙げています。

年末を楽しんで、1月にリセットする。

イギリスのカレンダーで考えれば、たしかに分かりやすい構造です。


ところが、イギリスにはもう一つ有名な「お酒を休む月」があります。


イギリス:なぜか10月にも「Sober October」がある

その名もSober October(ソバー・オクトーバー)。

soberは「酔っていない、しらふの」という意味なので、直訳すれば「しらふの10月」です。

現在、イギリスではがん患者を支援するMacmillan Cancer Supportが、10月の1か月間アルコールを飲まず、その挑戦に対して家族や友人から寄付を募るキャンペーンとして実施しています。

こちらは2013年、オーストラリアのDry Julyと提携して英国で始まったチャリティー企画です。

ここで、少し話が変わってきます。


Dry Januaryは、「年末のあとに生活や飲酒習慣を見直す」という意味が分かりやすい。

一方、Sober Octoberは、チャリティーイベントとして10月に成立したという側面が強い。

つまり、

「身体にとって1月や10月が特別だから、その月にお酒をやめる」というわけではありません。

そもそも、キャンペーンが生まれた理由が違うのです。


ビール好きの私としては、名前だけ聞くと、

「Oktoberfest(オクトーバーフェスト)の季節にSober Octoberなのか……」

と、少し複雑な気持ちにもなります。


オーストラリア:7月に酒をやめた3人が、大きな運動をつくった

さらに面白いのがオーストラリアです。

代表的なのはDry July。7月です。


始まりは2008年でした。

Brett、Kenny、Philという3人の友人が、7月の1か月間お酒を休むことにします。

どうせなら、その挑戦を使って地元病院のために寄付を集めよう。

目標は3,000豪ドル。

ところが実際には、初年度から25万豪ドルが集まりました。

これが、現在まで続くDry Julyの始まりです。


Dry July Foundationによると、累計参加者は40万人を超え、1億豪ドル以上を集める規模まで成長しています。


ここまで来ると、「なぜ7月なのか?」という問いに、医学的な理由を探すこと自体が少しズレていると分かります。


3人が7月に始めた。

成功した。

そして、7月のイベントとして定着した。

それだけでも、十分に「Dry Month」は成立するのです。


さらに学術研究を調べると、かつてオーストラリアでは、2月のFebfast、7月のDry July、10月のOcsoberという3つの1か月断酒キャンペーンが並存していました。

同じ国の中ですら「お酒を休む月」は一つではなかったのです。

※Ocsoberは2019年に終了したようです。


ベルギー:1月ではなく、あえて2月

ここまで調べた中で、特に面白かったのがベルギーでした。

ベルギーでは毎年2月に、Tournée Minérale(トゥルネ・ミネラル)という1か月間アルコールを飲まないキャンペーンが行われています。

2017年に始まり、2026年で10回目。

現在では毎年約150万人のベルギー人が参加する規模まで成長しています。


ベルギーといえば、世界屈指のビール大国です。

そんな国で100万人を大きく超える人たちが、毎年1か月ビールやワインを休んでいる。

それだけでも興味深いのですが、さらに気になることがあります。

なぜ、1月ではなく2月なのでしょうか。


過去に運営関係者が語った理由が、かなり率直でした。

まず、2月は一年でいちばん短い。

そして、新年に乾杯した直後から残りの1月を丸ごと禁酒するより、少し間を空けて2月から始める方がよいだろうと考えたというのです。

この話を読んだとき、急にベルギーが身近に感じられました。

「正月くらい飲みたいから、1月はやめておこう。」

かなり人間らしい理由です。


個人的には、この類のキャンペーンには我慢、修行的なイメージがあったのですが、「ビールを好きでいていい。イベントも楽しんでいい。断酒もしてみよう」という明るさがあって、ポジティブな印象を受けました。


これ、日本も同じではないでしょうか。


ハンガリー:11月に「Dry November」

さらにハンガリーには、Száraz November(Dry November/乾いた11月)があります。

依存症支援などを行うKék Pont Foundationが2016年から実施している、11月の30日間アルコールを飲まないキャンペーンです。

単に禁酒を呼びかけるのではなく、自分の飲酒習慣を観察し、お酒との関係を考える期間として位置づけられています。

11月が終われば、クリスマスや年末のイベントが増える12月。

そう考えると、こちらも一つの合理的な配置に見えてきます。


世界の「お酒を休む月」を並べると、本当にバラバラだった

ここまで見てきた事例を整理すると、こうなります。

国・地域 主なキャンペーン 月 特徴
イギリス Dry January 1月 年始に飲酒習慣を見直す
ベルギー Tournée Minérale 2月 1か月お酒を休む全国的キャンペーン
オーストラリア Dry July 7月 がん患者支援のチャリティー
イギリス Sober October 10月 がん患者支援のチャリティー
ハンガリー Száraz November 11月 飲酒習慣を振り返る30日間

このほか、フランスやオランダなどでも1月のキャンペーンがあり、ニュージーランドではDry Julyが展開されてきました。

研究の世界では、こうした取り組みをOne-Month Alcohol Abstinence Campaigns(OMACs)とまとめて呼ぶことがあります。

2022年の学術レビューでも、国によって名称、目的、募金の有無、選ばれる月、さらには地域の飲酒文化まで大きく異なることが指摘されています。

つまり、「世界では1月に酒をやめる」という理解は、少し違う。

正確には、「世界のさまざまな国で、それぞれ違う時期に1か月お酒を休む文化が生まれている」のです。

ある特定の月に必ずお酒を休むというムーブメントが、世界的に共通言語になっているわけではなさそうです。


では、日本で1か月お酒を休むなら?

ここからは、海外の事例ではなく、アストローカとして、日本人として考えてみます。

Dry Januaryを、そのまま日本に持ってきたらどうでしょうか。

12月に忘年会や年末の集まりがある。
この後に肝臓を休めるのは、大事そう。


しかし、その後には、正月があります。

親族も集まり、新年を祝う。

その中で、「今日から1か月、お酒を飲みません。」

……少しタイミングが悪い気がします。


日本では、年が明けても飲酒を伴う文化や行事が残っています。

例えば、お屠蘇。お屠蘇を飲まなくても、お酒を飲んで新年を祝う家族は多いのではないでしょうか。

それでも少なくとも、日本では「12月31日で酒の季節が終わる」とは言い切れません。


仕事が始まれば、1月には新年会もあります。


一方、3月から4月にかけては、異動や退職、入社などに伴う歓送迎会のシーズンです。

そう考えていくと、一つかなり都合のいい月があります。

2月です。

12月は、忘年会や年末。

1月は、正月、帰省、新年会。

それが一段落したところで2月。

そして、その先には3月、4月の歓送迎会シーズンがある。

年末年始を楽しむ
→ 2月に一度お酒から離れる
→ 春の歓送迎会シーズンへ

という流れです。

しかも2月は、通常28日。

一年でもっとも短い月です。

……これ、ベルギーとほとんど同じではないでしょうか。


ビール大国ベルギーが、

「新年に乾杯した直後から禁酒するのはちょっと……。だったら短い2月にしよう」

と考えた。

その発想は、日本にもかなり相性がよさそうです。


もちろん、「日本では2月に禁酒するのが健康上もっとも優れている」という科学的根拠があるわけではありません。

これはあくまで、日本の年間行事や文化と、海外の事例を重ね合わせたアストローカ考察です。

ただ、世界の事例を見ていると、そもそも「正しいDry Month」を科学的に一つに決める必要もなさそうです。


他の飲酒イベント空白期間の候補だと、6月や11月もありだと思っています。

ただ、個人的には飲酒イベントの重なる1月と3月の間に、一度飲まない時期を挟むのは、結構ありなんじゃないかと思っています。


お酒を休んでも、「飲む場面」はなくならない

1か月お酒を休む。

そう決めても、夕食や飲み会、週末の一杯といった「飲む場面」までなくなるわけではありません。

ベルギーのTournée Minérale参加者を調べた2024年の研究でも、社交の場でアルコールを飲まないことや、魅力的なノンアルコール飲料を見つけることが、参加中の難しさとして挙げられています。

研究者は、キャンペーンを続けやすくするためにも、魅力的なノンアルコール飲料の選択肢を増やすことが重要だと指摘しています。

お酒を飲まないなら、水や烏龍茶を飲む。

もちろん、それでも構いません。

でも、ビールは飲みたい。今日はアルコールだけいらない。という人もいます。


Dry Januaryも、Tournée Minéraleも、Dry Julyも、必ずしも「酒を嫌いになる運動」ではありません。

普段はお酒を楽しむ人が、一度アルコールから離れて、自分の飲み方を見直してみる。

そんな期間です。

だからこそ、その1か月を「我慢の期間」にしない飲み物にも意味があるのだと思います。

 

世界共通の「正しい月」はなかった

イギリスでは1月。

ベルギーでは2月。

オーストラリアでは7月。

イギリスには10月もあり、ハンガリーでは11月。

世界を調べてみると、「正しい断酒月」があるわけではありませんでした。

それぞれの国が、それぞれの文化やキャンペーンの歴史に合わせて、お酒から一度離れる期間をつくっています。

自分たちの暮らしに合わせて、ときどきアルコールから離れてみる。

そう考えると、日本では2月くらいが、ちょうどいいのかもしれません。

 


参考文献・主な出典

  1. Alcohol Change UK, “The Dry January Story”
    https://alcoholchange.org.uk/help-and-support/managing-your-drinking/dry-january/about-dry-january/the-dry-january-story

  2. Macmillan Cancer Support, “Go Sober for October”
    https://www.gosober.org.uk/

  3. Civil Society, “Macmillan launches Go Sober for October fundraising challenge”
    https://www.civilsociety.co.uk/news/macmillan-launches-go-sober-for-october-fundraising-challenge.html

  4. Dry July Foundation, “Our Story / Dry July Foundation”
    https://www.dryjuly.com/about

  5. Tournée Minérale, 公式サイト・2026年プレス資料
    https://tournee-minerale.be/

  6. The Bulletin, “Mocktails ahoy: Tournée Minérale starts next week”
    https://www.thebulletin.be/mocktails-ahoy-tournee-minerale-starts-next-week

  7. de Ternay J, et al. “One-month alcohol abstinence national campaigns: a scoping review of the harm reduction benefits.” Harm Reduction Journal. 2022.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8895623/

  8. Thienpondt A, et al. “Process evaluation of the Belgian one-month-without alcohol campaign ‘Tournée Minérale’.” BMC Public Health. 2024.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10840226/

  9. Kék Pont Foundation, “Száraz November”
    https://kekpont.hu/szaraz-november/

  10. 政府広報オンライン「健康や長寿を願って飲む薬草酒『お屠蘇』」
    https://www.gov-online.go.jp/hlj/ja/january_2025/january_2025-02.html

※毎日多量のアルコールを摂取している人や、アルコール依存が疑われる人が自己判断で突然飲酒を中止すると、離脱症状が生じる場合があります。該当する場合は、医療専門家への相談が推奨されます。

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