ノンアルコール飲料を飲むと本当にお酒は減る?研究を調べてみた

公開: 更新: 執筆・編集: アストローカ創業者

ノンアルコール飲料を飲むと、本当にお酒は減るのでしょうか。

結論から言うと、減る可能性はかなりあります。


日本では、普段から比較的多くお酒を飲む人にノンアルコール飲料を提供すると、実際のアルコール摂取量が減ったことがランダム化比較試験で確認されています。

海外でも、スーパーでノンアルの選択肢を増やしたり、パブでノンアルビールを選べるようにしたりすると、アルコール飲料の選択や販売が減っています。


ただし、研究を追っていくと、単に「ノンアルを飲めば酒が減る」という話ではありません。

鍵になっているのは、本来飲むはずだった酒が、ノンアルに置き換わることです。

日本でノンアルを配ったら、実際にお酒が減った

2023年、筑波大学の研究チームが、普段から比較的多く飲酒している成人123人を対象にランダム化比較試験を行いました。

参加者を、

  • ノンアルコール飲料を12週間無料で提供するグループ
  • ノンアルコール飲料を提供しないグループ

に分けています。


重要なのは、ノンアルを渡された人たちも、お酒を禁止されたわけではないことです。

普段どおり生活しながら、飲んだアルコール飲料とノンアルコール飲料を記録しました。

12週間後、直近4週間の純アルコール摂取量は、

  • ノンアル提供群:平均320.8g減
  • 対照群:平均76.9g減

となりました。

1日平均にすると、

  • ノンアル提供群:約11.5g減
  • 対照群:約2.7g減

です。

対照群でも少し減っています。


飲酒量を記録すること自体が減酒につながった可能性があります。

それでも、ノンアルを提供された人たちでは、それ以上に大きくアルコール摂取量が減りました。


なぜ減った?「我慢」より「置き換え」

この研究でもう一つ重要なのが、ノンアルを多く飲むようになった人ほど、アルコール摂取量が大きく減っていたことです。


ノンアル摂取量とアルコール摂取量の変化には、中程度の負の相関がありました。

つまり、「飲み物を我慢した」というより、今まで酒を飲んでいた場面の一部が、ノンアルに置き換わったと考えると説明しやすい結果です。


たとえば、

  • 夕食でビールを飲む
  • 風呂上がりにビールを飲む
  • 仕事が終わったらビールを飲む

こうした「何かを飲みたい時間」そのものは変わっていない。

ただ、その中身が酒からノンアルに変わった。

減酒というと「飲まないように我慢する」ことを想像しがちですが、研究を見ると、もう少し違う方法がありそうです。


1ケースだけ渡した研究でも、同じ傾向が出た

2026年には、大量飲酒傾向のある労働者24人に、350mL×24本のノンアルコール飲料を1ケースだけ渡す研究も行われました。

3週間後、アルコール摂取量は有意に減少しました。


一方で、アルコール飲料とノンアルコール飲料を合計した飲料量は、大きく変わりませんでした。


つまり、飲み物そのものを減らしたというより、酒の一部がノンアルに入れ替わったと考えやすい結果です。


ただし、6週間後にはアルコール摂取量の減少は統計的に明確ではなくなりました。

1ケース渡したノンアルが手元から減っていけば、置き換えも起きにくくなる。

そんな可能性も考えられます。


別の278人を対象にしたRCTでも、お酒は減った

2026年には、過剰飲酒傾向のある日本の労働者278人を対象とした別のランダム化比較試験も発表されました。

参加者を、

  • 12週間ノンアルコール飲料を提供するグループ
  • 提供しないグループ

に分けたところ、ノンアル提供群ではアルコール摂取量が有意に減少しました。


今回は特に、1回に飲む量よりも、飲酒する頻度が減ったことが大きな変化でした。

2023年の123人とは別の参加者です。


そのため現在では、「1本の研究でたまたま減った」という段階からは一歩進んでいます。

※ただし、2023年と2026年の主要RCTはいずれも筑波大学の同じ研究グループによるもので、アサヒビールから研究資金の提供を受けています。

論文では、研究設計、データ収集、解析、解釈、論文作成などに資金提供者は関与していないとされています。

研究資金だけを理由に結果を否定する必要はありませんが、今後、独立した研究グループでも同様の結果が再現されるかは見ておきたいところです。


ノンアルは「家にある」だけでなく、「選びやすい」ことも重要かもしれない

ここから海外の研究です。

2023年、英国の研究チームが成人737人を対象に、オンラインスーパーで選べる飲料の比率を変えるランダム化比較試験を行いました。


売場を、

  • ノンアル25%・アルコール75%
  • ノンアル50%・アルコール50%
  • ノンアル75%・アルコール25%

の3パターンに分けます。


すると、選ばれたアルコール量は、

  • ノンアル25%:29.40 units
  • ノンアル50%:25.51 units
  • ノンアル75%:17.46 units

となりました。


また、ノンアルの割合を25%から75%に増やすと、選択されたアルコール量は約41%減少しました。 


参加者はその後、実際のオンラインスーパーでも商品を購入しています。

実際の購入でも、ノンアルの選択肢が多いグループほどアルコール購入量が少ない方向でした。


誰かに、「健康のために酒を減らしましょう」と説得されたわけではありません。

目の前にある選択肢を変えただけです。

それでも選ぶものが変わりました。


本物のパブでも、アルコールビールが減った

さらに2024年、英国の14軒のパブやバーを使った実験が行われました。

介入期間には、アルコール入りの生ビールを1種類外し、その代わりにノンアルコールの生ビールを1種類入れるという変更をしています。


すると、アルコール入り生ビールの販売量は約4%減少しました。

実験条件を十分に守れなかった店舗を除くと、約5%減っています。


一方で、飲料全体の売上高が減ったという明確な証拠はありませんでした。

つまり、何も飲まなくなったというより、アルコールビールの一部がノンアルへ移ったと考える方が自然です。

 

家でも。

スーパーでも。

パブでも。

ノンアルを選びやすい状態を作ると、アルコール側が減る。

研究環境は違いますが、同じ方向の結果が出ています。

 

でも、ノンアルを飲めば自動的にお酒が減るわけではない

ここで重要な反例があります。

2024年、オランダの大学生4,318人を対象にした調査が発表されました。

アルコール飲料とノンアルコール飲料の両方を飲んだ経験がある人に、

「ノンアルを飲むようになってから、お酒の量はどう変わったか」

を尋ねています。

結果は、

  • お酒が減った:16.0%
  • お酒をやめた:1.5%

一方、

  • お酒の量は変わらず、ノンアルも飲むようになった:54.9%

でした。

 

つまり、多数派は、酒をノンアルに替えたのではなく、酒はそのままでノンアルも飲んでいたわけです。

これなら当然、酒は減りません。

 

ここで最初の問いへの答えが少し変わります。

「ノンアルを飲むと酒が減る」のではない。

「酒を飲むはずだった場面で、ノンアルに置き換われば酒が減る」。

この違いが重要です。

 

減酒に使うなら「足す」より「替える」

英国のアルコール情報機関Drinkawareは、ノンアルを減酒に使う考え方を、Swap, don't add.と表現しています。

足すのではなく、替える。

 

たとえば毎晩ビールを2本飲んでいるなら、

ビール2本を飲んだあとにノンアルを追加するのではなく、

2本目をノンアルにしてみる。

 

あるいは、飲み会で最後まで酒を飲み続けるのではなく、

途中からノンアルに替える。

 

酒を減らしたいなら、

「飲まないように頑張る」ことだけではなく、

酒以外を選べる状態を先に作っておく

という方法もあります。

 

ただし、誰にでも同じように効くわけではない

2023年の筑波大学のRCTを、飲酒問題の程度を測るAUDITの点数別に再解析した研究があります。

飲酒の程度が14点以下の、飲酒問題がもともと大きくないグループでは、ノンアル提供による飲酒量減少が確認されました。

一方、15点以上では、対照群との差は統計的に明確ではありませんでした。 

 

飲酒問題が大きくなるほど、単純な置き換えが成立しにくくなる可能性があります。

 

また、アルコール使用障害や大量飲酒者を対象とした研究の系統レビューでは、ノンアルや低アルコール飲料の味や香りなど、酒に似た刺激が飲酒への渇望を高める場合があることも報告されています。

 

そのため、ノンアルを減酒ツールとして、誰にでも同じように勧められるとまでは言えません。

 

結論:減酒の鍵は「我慢」より「置き換え」

ここまでの研究をまとめます。

  • 家にノンアルを置く。
    • → 実際のアルコール摂取量が減った。
  • スーパーでノンアルを選びやすくする。
    • → アルコールの選択が減った。
  • パブでノンアル生ビールを選べるようにする。
    • → アルコール入りビールの販売量が減った。

一方、

  • 今まで通り酒を飲み、その上にノンアルも追加する。
    • → 酒は減らない。

こうして見ると、ノンアルコール飲料そのものに、酒を減らす特殊な作用があると考える必要はなさそうです。

 

むしろ重要なのは、酒を飲むはずだった場面に、代わりに選べる飲み物があること。

 

選択肢があることで、一部の酒が自然にノンアルへ置き換わる。

それが、現在の研究から見える減酒効果の中心です。

 

お酒を少し減らしたいなら、毎回、「今日は絶対に飲まない」と意志力だけで戦うより、

冷蔵庫に、自分が飲みたいと思えるノンアルを入れておく。

研究を見る限り、そんな方法にも十分な合理性がありそうです。

 


主な参考文献

[1] Yoshimoto H, et al. Effect of provision of non-alcoholic beverages on alcohol consumption: a randomized controlled study. BMC Medicine. 2023;21:379.

[2] A brief provision of non-alcoholic beverages reduces alcohol consumption: A pilot, single-arm study. Heliyon. 2026.

[3] Dobashi S, et al. Non-alcoholic beverage provision reduces alcohol consumption and improves health-related outcomes, with no effect on presenteeism: a randomized controlled trial. Scientific Reports. 2026.

[4] Clarke N, et al. Impact on alcohol selection and online purchasing of changing the proportion of available non-alcoholic versus alcoholic drinks: A randomised controlled trial. PLOS Medicine. 2023.

[5] De-Loyde K, et al. The impact of introducing alcohol-free beer options in bars and public houses on alcohol sales and revenue: A randomised crossover field trial. Addiction. 2024.

[6] Groefsema MM, et al. Consumption of alcohol-free and alcoholic beverages among Dutch university students: Substitution or addition? Drug and Alcohol Review. 2024.

[7] Dobashi S, et al. The effectiveness of reduction in alcohol consumption achieved by the provision of non-alcoholic beverages associates with Alcohol Use Disorders Identification Test scores. BMC Medicine. 2024.

[8] Caballeria E, et al. “Doctor, Can I Drink an Alcohol-Free Beer?” Low-Alcohol and Alcohol-Free Drinks in People with Heavy Drinking or Alcohol Use Disorders: Systematic Review of the Literature. Nutrients. 2022.

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