「お酒を減らしたい。でも、完全にやめたいわけではない。」
そんなとき、何から始めればいいのでしょうか。
結論から言えば、まずやることはシンプルです。
今、自分がどれだけのアルコールを飲んでいるのか測る。
そのうえで、
- 飲む日を減らす
- 1回に飲む量を減らす
- アルコール度数を下げる
- 酒の一部をノンアルコール飲料に置き換える
といった方法から、自分が変えやすいものを選びます。
減酒できたかどうかを、「今日は飲まなかった」「昨日は飲んでしまった」と1日単位で判定する必要はありません。
最後に見るのは、1週間、1か月で摂取した純アルコールを、何gから何gまで減らせたかです。
まず、自分がどれだけ飲んでいるか測る
減酒を始めるなら、最初に現在地を把握します。
いわば、少しだけレコーディングダイエットに似ています。
今どれだけ飲んでいるのか分からなければ、減ったかどうかも分かりません。
ここで便利なのが「純アルコール量」です。
厚生労働省は、お酒に含まれる純アルコール量を次の式で計算しています。
飲んだ量(mL)× アルコール度数 ÷ 100 × 0.8
たとえば5%のビール500mLなら、
500 × 0.05 × 0.8 = 20g
です。
5%のビール350mLなら約14g。
「ビールを2本」と記録するよりも、純アルコール量まで分かれば、違う種類のお酒も同じ基準で比較できます。
まずは1週間、何をどれだけ飲んだのか記録してみます。
そして、今週は純アルコール200gだった。といった現在地を把握する。
この数字が、減酒のスタート地点になります。
純アルコール量については、下記の記事にて詳しく解説しています。
「測る」ことを含む減酒プログラムには、実際に効果が出ている
飲酒量を記録することについては、日本でもランダム化比較試験があります。
問題飲酒がある日本の労働者100人を対象に、一方のグループにはWeb上のプログラムを使って4週間、毎日の飲酒量を記録してもらいました。
12週間後、週間純アルコール量は、
- 介入群:329g → 246g
- 対照群:294g → 276g
となりました。
介入群では、アルコールを飲まない日も増えています。
※もちろん、この研究だけから「記録すれば必ず83g減る」とは言えません。
ただ、自分の飲酒を記録して見える状態にすることは、研究されている減酒方法の一つです。
一方、2025年に日本の40診療所、1,133人を対象に行われた研究では、医師が1分未満の非常に短い減酒アドバイスをしても、12週間後、24週間後の飲酒量は対照群より有意には減りませんでした。
「飲みすぎなので、少し控えましょう」とお医者さんに言われるだけで、人の飲酒習慣が簡単に変わるわけではなさそうです。
では、実際にどこを変えればいいのでしょうか。
飲酒量を減らすレバーは、それほど多くない
純アルコールの総量を減らす方法を分解すると、大きく4つあります。
- 飲む日を減らす
- 1回に飲む量を減らす
- アルコール度数を下げる
- 一部を0.00%に置き換える
あとは、この4つを実行しやすくするために、飲む前にルールを決めたり、買う量を変えたりします。
順番に見ていきましょう。
①飲む日を減らす
毎日、5%のビール500mLを1本飲んでいるとします。
1本あたりの純アルコールは約20g。
週7日なら、20g × 7日=140g/週です。
これを週6日にすれば、120g/週になります。
1週間のうち1日だけでも、20g減りました。
先ほど紹介した日本の飲酒記録研究でも、アルコールの量を記録するようになってから、変化したのは総量だけではありません。
アルコール量を記録する人は、アルコールを飲まない日が増えた一方、飲酒日1日あたりの飲酒量には明確な差がありませんでした。
つまり、「今日は、飲む量は少なくしたいね。飲んでから考えよう」だけではなく、そもそも飲まない日を作ることが、総量を下げるのに有効な手段の一つです。
毎日飲んでいる人なら、週7日 → 週6日。週5日なら、週4日。
それだけでも数字は変わります。
②1回に飲む量を小さくする
飲む日数を変えず、1回の量を小さくする方法もあります。
たとえば5%のビールなら、
500mL:約20g
350mL:約14g
です。
500mL缶を350mL缶に変えるだけで、1回あたり約6g減ります。
海外では、「最初から選べる最大サイズを小さくする」という実験も行われています。
2024年、英国のパブやバーなどで、ドラフトビールの最大サイズだった1パイント(568mL)を販売せず、最大2/3パイントにしたところ、ビールの販売量が約9.7%減りました。
これは「家庭で500mL缶を350mL缶にすれば9.7%減る」という研究ではありません。
ただ、飲み始めてから我慢するのではなく、最初から選べる量を小さくしておくという方法には、実際の飲食店での研究での裏付けがあります。
- 500mL缶を買わず350mL缶を選ぶ
- 大きな缶を何本も冷やしておかない
- 「3杯目を我慢する」ではなく、「今日は2杯」と先に決めておく
考え方は同じです。
③アルコール度数を下げる
これは計算すればすぐ分かります。
500mL飲む場合、
5%:純アルコール20g
3%:純アルコール12g
です。
同じ500mLなら、8g減ります。
したがって、いつも5〜6%の商品を飲んでいるなら、より低い度数の商品へ変えることでも純アルコール量は下げられます。
ただし、「低アルコールだから、もう1本飲もう」となれば差は小さくなります。
減酒という観点では、度数だけでなく、最終的に何mL飲んだかも一緒に見るのが分かりやすいでしょう。
④酒の一部をノンアルコール飲料に置き換える
「ビール2本を1本にする」のが難しければ、1本目はビール、2本目は0.00%という方法もあります。
これは、日本人を対象にかなり直接的に研究されています。
2023年に筑波大学などが行ったランダム化比較試験では、アルコール依存症と診断されていない過剰飲酒者123人を対象に、一方のグループへ12週間、希望するノンアルコール飲料を無料で提供しました。
12週間後、直近4週間の純アルコール摂取量は、開始前と比べて、
ノンアル提供群:320.8g減少
対照群:76.9g減少
しました。
差にすると、4週間で約244gです。
さらに、ノンアルコール飲料の摂取量が増えた人ほど、アルコール飲料の摂取量が減る関係も確認されました。
ここで大事なのは、ノンアルコール飲料を追加することではありません。
いつも飲んでいる酒の一部と、ノンアルコール飲料を入れ替える。という使い方です。
たとえば毎晩5%のビール500mLを2本飲んでいる人なら、
ビール2本→ビール1本+0.00%を1本
にすると、その日の純アルコール量は40gから20gになります。
「飲む」という行動を全部やめなくても、摂取するアルコールだけを減らせます。
「飲みたくなったらどうするか」を先に決めておく
もう一つ使えるのが、飲みたくなった瞬間に毎回考えないことです。
たとえば、
- 2本飲んだら、3本目は0.00%にする
- 平日は500mLではなく350mLを買う
- 水曜日はアルコールを飲まない
と先に決めておく。
心理学では、このような「○○になったら、△△する」というルールを「implementation intention(実行意図)」と呼びます。
海外では、こうしたルールを作ったグループで、その後の飲酒量が減ったランダム化比較試験があります。
考え方は単純です。
飲みたくなってから判断するのではなく、飲みたくなる前に判断を終わらせておく。
毎回意志の強さを試す必要がなくなります。
水を挟む、ゆっくり飲む、酒を家に置かないのは?
減酒方法を調べると、
- 水を挟む
- ゆっくり飲む
- 酒を大量に買い置きしない
- 飲み始める時間を遅らせる
- ノンアルを冷やしておく
といった方法もよく出てきます。
いずれも実践しやすい工夫です。
ただ、今回国内外の研究を調べた限り、すべての方法について「これをすると週間純アルコール量が○g減る」という直接的な研究が同じように揃っているわけではありません。
まず優先するなら、
- 測る
- 飲む日数・量・度数を変える
- 一部をノンアルへ置き換える
- あらかじめルールを決める
このあたりから考えると整理しやすいでしょう。
まず「今週何gだったか」を基準に考える
全部を一度に変える必要はありません。
仮に今週の純アルコール摂取量が200gだったとします。
だったら、
「来週から一滴も飲まない」
ではなく、
まず180gにするには、どこを変えられるか。
と考えてみる。
5%のビール500mLを飲む日を1日減らせば、約20g減ります。
どこか1本を0.00%へ置き換えても、約20g減ります。
500mLを350mLに変えれば、1回につき約6g減ります。
5%を3%にすれば、500mLあたり約8g減ります。
どの方法でも、最終的に摂取する純アルコールが減れば「減酒」です。
減酒できたかは、1週間・1か月の総量で見る
- 昨日は飲んだ
- 今日は飲まなかった
- 金曜日は飲み会で多く飲んだ
- 水曜日は0.00%だけだった
一日ずつ見れば、飲み方はバラバラです。
だから、減酒できたかどうかを見るときは、少し長い期間で考えます。
先週200gだった。今週は170gだった。
先月600gだった。今月は480gだった。
それなら、以前より減っています。
減酒とは、毎日完璧な飲み方をすることではありません。
1週間、1か月で摂取した純アルコールを、何gから何gまで減らせたか。
まず測る。
減らしやすいところを一つ変える。
また測る。
「お酒を減らしたいけれど、完全に断酒するつもりはない」という人なら、この考え方から始めるのがシンプルです。
なお、週や月の総量が同じなら、どんな飲み方でも同じという意味ではありません。
短時間に大量に飲むことには別のリスクがあります。
週・月の総量は、一時多量飲酒の帳尻合わせではなく、「以前の自分より減らせたか」を見るための指標です。
※飲酒量を減らしたときに手の震え、発汗、不眠、強い不安などが現れる場合は、この記事で想定している一般的な減酒とは状況が異なります。
アルコールの身体依存では重い離脱症状が起こることもあるため、医療機関など専門家への相談が必要です。
参考文献・資料
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