酒量を「ビール何本」「ワイン何杯」で数えるのは、実はかなり曖昧です。
同じ350ml缶でも、純アルコールが
- 5%なら 14g
- 7%なら 19.6g
- 9%なら 25.2g
入っています。
アルコールによる健康への影響を考えるなら、見るべきなのは「何杯飲んだか」より、純アルコールを何g摂ったかです。
厚生労働省も、飲酒量を把握する際には、飲料の量(ml)だけでなく純アルコール量(g)に着目することが重要だとしています。
では、5%のビール350mlを飲んで「14g」と分かったとして、それは多いのでしょうか。少ないのでしょうか。
先に、この記事の結論を示します。
酒量は、まず純アルコール量(g)で把握する。
そのうえで、健康な成人が飲酒する場合の実用的な比較基準の一例として、オーストラリアでは、
「週100g以下、かつ1日40g以下」
という低リスク飲酒ガイドラインが採用されています。
ただし、これは「100gまでは身体に影響しない」という安全ラインではありません。
この違いまで含めて理解すると、アルコールについての健康情報がかなり読みやすくなります。
純アルコール量とは?
純アルコール量とは、飲んだお酒に含まれるエタノールそのものの重量です。
たとえば「5%のビール500ml」なら、
- 500ml:飲料全体の量
- 5%:飲料中のアルコール濃度
- 約20g:実際に摂る純アルコール量
という関係です。
5%だから少ない、10%だから多い、と度数だけ見ても酒量は分かりません。
5%を1L飲めば純アルコール40gですし、40%のウイスキーでも30mlなら約9.6gです。
飲んだ量 × アルコール度数の両方を見て、初めて実際の酒量が分かります。
「アルコール」と「エタノール」は何が違う?
厳密には、この2つは同じ意味ではありません。
「アルコール」は化学物質のグループの名前で、エタノールはその一種です。
お酒に含まれていて、私たちが飲酒によって摂取する「アルコール」は基本的にエタノール(エチルアルコール)です。
つまり、
- アルコール:化学物質のグループ
- エタノール:その一種で、お酒に含まれるアルコール
という関係です。
そのため飲酒の話では、「純アルコール量」と「純エタノール量」は実用上ほぼ同じ意味として使われます。
純アルコール量の計算方法
計算式はシンプルです。
純アルコール量(g)= 飲んだ量(ml)× アルコール度数 ÷100 × 0.8
0.8は、エタノールの比重をおおよそ0.8として計算するための数字です。厚生労働省も同じ式を示しています。
たとえば5%のビールなら、
- 350mlなら、350 × 0.05 × 0.8 = 14g
- 500mlなら、500 × 0.05 × 0.8 = 20g
です。
お酒を純アルコール量で比べてみる
代表的な量を計算すると、こうなります。
| お酒 | 飲む量 | 度数 | 純アルコール量 |
|---|---|---|---|
| ビール | 350ml | 5% | 約14g |
| ビール | 500ml | 5% | 約20g |
| IPA | 350ml | 7% | 約19.6g |
| ワイン | 150ml | 12% | 約14.4g |
| 日本酒 | 180ml | 15% | 約21.6g |
| ウイスキー | 60ml | 40% | 約19.2g |
ここで面白いのが、7%のIPA 350mlと、5%のビール500mlがほぼ同じ約20gになることです。
見た目は「350ml缶1本」と「500ml缶1本」でかなり違います。
でも、エタノール量で見ればほぼ同じ。
だから酒量を健康との関係で考えるとき、「ビールを1本飲んだ」だけでは情報が足りません。
海外では「1杯」を純アルコール量に換算して考える
海外では、酒量を「standard drink」や「unit」という単位に換算する国があります。
ところが、その1単位の定義は世界共通ではありません。
- 英国:1 unit = 8g
- オーストラリア:1 standard drink = 10g
- 米国:1 standard drink = 14g
と国によって異なります。
つまり、「1杯」だけでなく「1 standard drink」さえ、国が変われば量が違います。
その点、純アルコール○gなら意味は変わりません。
酒量について研究結果や各国のガイドラインを比較するなら、gで見るのが最も分かりやすい理由です。
結局、1日・1週間で何gまで?
ここからが重要です。
アルコールには、すべての健康影響について共通する「ここまでは身体に影響しない」という境界線が確認されているわけではありません。
一方で、何の目安もなければ、自分の飲酒量が多いのか少ないのか判断できません。
そこで参考になるのが、「低リスクに抑えるための基準」です。
オーストラリアでは、健康な成人男女に対して、
週10 standard drinks以下、かつ、どの1日も4 standard drinks以下
を推奨しています。
1 standard drinkは純アルコール10gなので、週100g以下 + 1日40g以下です。
さらに同ガイドラインは「飲む量が少ないほど、アルコールによる害のリスクは低くなる」と説明しています。
この記事では、この数字を飲酒量を考えるための実用的な比較基準の一例として使います。
「週100g」には大規模研究の裏付けもある
週100gという数字は、単に行政が覚えやすく決めたものではありません。
2018年に医学誌『The Lancet』へ発表された研究では、19の高所得国における83件の前向き研究から、現在飲酒している599,912人のデータを統合して解析しました。
その結果、現在飲酒している人の全死亡リスクが最も低かったのは、週100g程度以下でした。
さらに週0〜100gを飲む人と比較すると、40歳時点の平均余命は、
- 週100〜200g:およそ 6か月短い
- 週200〜350g:およそ 1〜2年短い
- 週350g超:およそ 4〜5年短い
という関連が推計されています。
週100g前後が低リスク側の飲酒量を考える一つの目安になることを示す、非常に大規模なデータです。
週100gは、ビールならどれくらい?
5%のビールなら、350ml = 約14gです。
毎日1缶飲むと、14g × 7日 = 98g/週になります。
つまり、5%・350mlを毎日1缶で、ほぼ週100gです。
一方、500mlなら約20gなので、20g × 7日 = 140g/週となります。
| 5%ビール | 1週間の純アルコール量 |
|---|---|
| 350ml × 毎日 | 約98g |
| 500ml × 毎日 | 約140g |
350mlと500ml。
1回だけなら「150ml違うだけ」ですが、毎日の習慣になると週間量にはかなり差がつきます。
酒量は1日だけでなく、週で足してみると見え方が変わります。
ただし、週100gは「100gまで安全」という意味ではない
ここは数字の意味を取り違えない方がいいところです。
週100gは、安全と危険を分ける線ではありません。
健康影響によって、飲酒量との関係は違います。
たとえば血圧。
7つの長期追跡研究、19,548人をまとめた2023年のメタ解析では、飲酒量と収縮期血圧の変化にはほぼ直線的な関係があり、明確な閾値は確認されませんでした。
飲酒しない場合と比較すると、
- 純アルコール12g/日:収縮期血圧が平均 約1.25mmHg高い
- 48g/日:平均 約4.90mmHg高い
という結果でした。
日本人男性を対象にした研究でも、0.1〜22.9g/日の比較的少ない飲酒群から高血圧発症リスクの上昇が観察されています。
つまり、100gまではノーダメージで、101gからリスクが生まれるという話ではありません。
週100gは、飲む場合に総量を低い側へ抑えるためのガードレールと考える方が正確です。
なぜ「週100g」だけでなく「1日40g」も見るのか
週間量だけを守ればいいわけでもありません。
極端に言えば、月〜土は0g、日曜日に100g
でも週間量だけなら100gです。
これを、少量ずつ飲むのと同じとは考えられません。
オーストラリアが「週100g以下」に加えて「1日40g以下」も示しているのは、一度に多く飲むことによるリスクも抑えるためです。
5%ビールで40gなら、およそ1Lです。
ただし、この40gについても、「39gなら慢性疾患への影響がない」という閾値ではありません。
週の総量とは別に、一日にまとめすぎないための第二のガードレールとして考えると分かりやすいでしょう。
では、日本でよく聞く「20g」は何?
ここで混乱しやすい数字を整理します。
日本では長年、「純アルコール20g」という数字がよく使われてきました。
2000年に始まった「健康日本21」では、「節度ある適度な飲酒」を1日平均純アルコール約20g程度と説明していました。
5%ビールなら500mlで約20gです。
そのため現在でも、「20g=適量」という説明を見かけます。
ただし、この20gを、「毎日20gまでは安全」と読むのは適切ではありません。
現在の厚生労働省のガイドラインは、単一の「適量」を示すより、純アルコール量を把握し、疾病ごとのリスクや個人差を踏まえて飲酒量を決める考え方を取っています。
実際、先ほどの血圧研究のように20gより少ない量から変化が観察される健康アウトカムもあります。
「20g」は日本で長く使われてきた重要な数字ですが、安全保証の数字ではないと理解しておく方がいいでしょう。
「男性40g・女性20g」も、飲んでいい上限ではない
もう一つ、日本の資料でよく見るのが、
男性40g/日以上
女性20g/日以上
という数字です。
これは現在の健康日本21でも使われている、「生活習慣病のリスクを高める量」の政策指標です。
つまり、
男性は40gまでOK
女性は20gまでOK
という意味ではありません。
厚生労働省の解説では、全死亡や一部の循環器疾患について、男性では44g/日前後、女性では22g/日前後以上で危険性が高くなる研究などをもとに、分かりやすさを考慮して40g・20gという指標が設定されています。
ここまで出てきた数字を整理すると、役割はそれぞれ違います。
| 数字 | 何を意味する? |
|---|---|
| 20g/日 | 日本でかつて「節度ある適度な飲酒」として広く使われた目安 |
| 男性40g・女性20g/日以上 | 日本の「生活習慣病のリスクを高める量」という政策指標 |
| 週100g+1日40g | 豪州の健康な成人男女向け低リスク飲酒ガイドライン |
どれも「ここまでは安全」という線ではありません。
ここを分けて覚えるだけでも、飲酒に関する数字の混乱はかなり減ります。
少量の酒なら、むしろ健康にいいのでは?
かつては、「少量飲酒者はまったく飲まない人より死亡率が低い」というJ字型の関係がよく紹介されていました。
ただ、この議論には注意が必要です。
2023年に107件のコホート研究、約484万人をまとめたメタ解析では、元飲酒者を非飲酒者に含めてしまう問題など、研究上のバイアスを調整すると、1.3〜24g/日の低量飲酒者に全死亡リスクの有意な低下は確認されませんでした。
少なくとも、「健康のために酒を飲んだ方がいい」と考える必要はありません。
一方で、この記事は「だから酒は飲むべきではない」と主張するものでもありません。
酒を楽しむなら、まず自分が何g飲んでいるのかを知る。
そのうえで、量とリスクの関係を理解して自分で選ぶ。
そのための物差しが純アルコール量です。
飲酒頻度や休肝日は、総量とは分けて考える
ここまで読んで、「5%ビール350mlなら毎日飲んでも98g/週。では毎日飲んでいいのか?」という疑問も出てきます。
これは、今回扱った週間総量とは別に、飲酒頻度を考える問題です。
同じ週間量でも、
- 毎日飲む
- 飲まない日を作る
- 週末にまとめる
では、飲み方が違います。
ASTROCA Journalでは、この点について「休肝日は本当に必要?飲酒量と飲酒頻度を分けて考える」で詳しく検討しています。
同じ100gでも、全員が同じリスクではない
純アルコール量は、酒量を比較する非常に便利な物差しです。
しかし、健康への影響を決める唯一の数字ではありません。
同じ量を飲んでも、
- 年齢
- 性別
- 体格
- 飲む速さ
- 持病
- 服薬
- 遺伝的なアルコール代謝能力
などによって影響は変わります。
厚生労働省も、飲酒による疾病リスクには個人差があることを前提に、自分に合った飲酒量を考えるよう求めています。
特定の疾患がある場合、妊娠中など飲酒を避ける必要がある場合、運転をする場合などには、今回紹介した一般的な量の目安を当てはめる話ではありません。
酒量を見るなら、「何杯」より「何g」
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 5%ビール350ml = 約14g
- 5%ビール500ml = 約20g
- 7% IPA 350ml = 約20g。
同じ「ビール1本」でも、純アルコール量は違います。
だから酒量を見るなら、「何杯飲んだか」ではなく、「純アルコールを何g摂ったか」。
そして、その数字を解釈するときには、健康な成人が飲酒する場合の比較基準の一例として、
週100g以下 + 1日40g以下
という豪州のガイドラインがあります。
ただし、これは「そこまで飲んでいい」という目標でも、「そこまでは身体に影響しない」という安全ラインでもありません。
飲むのであれば、量が少ないほどアルコールによるリスクは低くなる。そのうえで、自分の現在地を把握するためのガードレールとして使う。
これが一番分かりやすい考え方だと思います。
「ビール何本」から「純アルコール何g」へ。
自分が普段どれくらいのエタノールを摂っているのか。
まず、それを知るところから酒量を考えてみてください。
主な参考資料・研究
-
厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」
-
厚生労働省 e-ヘルスネット「飲酒量の単位」
-
厚生労働省「健康日本21」
-
Wood AM, et al. The Lancet. 2018. Risk thresholds for alcohol consumption: combined analysis of individual-participant data for 599,912 current drinkers in 83 prospective studies.
-
National Health and Medical Research Council. Australian Guidelines to Reduce Health Risks from Drinking Alcohol.
-
Di Federico S, et al. Hypertension. 2023. Alcohol Intake and Blood Pressure Levels: A Dose-Response Meta-Analysis of Nonexperimental Cohort Studies.
-
Zhao J, et al. JAMA Network Open. 2023. Association Between Daily Alcohol Intake and Risk of All-Cause Mortality.