「休肝日は作った方がいい」と、よく言われます。
でも、少し不思議です。
1週間に飲むアルコールの量がまったく同じなら、飲む日数を減らすことに意味はあるのでしょうか。
たとえば、5%のビールを週に2L飲むとして、
- 週1日で2Lまとめて飲む
- 週2日で1Lずつ飲む
- 週4日で500mlずつ飲む
- 毎日約286mlずつ飲む
純アルコール量は、どれも週約80gです。
健康への影響も同じなのでしょうか。
現在の研究を総合すると、「同じ週80gなら、どう飲んでも同じ」とは考えにくいです。
一度に大量に飲むことには、総量とは別のリスクがあります。
一方、少量だからといって毎日飲むことが最も低リスクとも言えません。
では、何日くらいがいいのか。
現時点で「週3日」「週4日」が医学的な最適解と証明されているわけではありません。
それでも、研究から実用的な目安を一つ出すなら、
一回量を抑えて週3〜4日程度に分散し、残りの日はアルコールを飲まない
という形は、かなり合理的な候補です。
なぜそう考えられるのか。
論文を追ってみます。
まず、週のアルコール量を完全にそろえてみる
5%のビールを週2L飲む場合、純アルコール量は約80gです。
飲む頻度だけを変えると、こうなります。
| 飲酒頻度 | 1回に飲む5%ビール | 1回の純アルコール量 | 週の純アルコール量 |
|---|---|---|---|
| 週1日 | 2,000ml | 約80g | 約80g |
| 週2日 | 1,000ml | 約40g | 約80g |
| 週4日 | 500ml | 約20g | 約80g |
| 週7日 | 約286ml | 約11g | 約80g |
総量は同じ。
違うのは、1回量と飲む頻度だけです。
この条件で考えてみます。
大前提:健康リスクでは「総量」が重要
頻度を考える前に、もっと大きな話があります。
飲むアルコールの総量そのものを減らせるなら、まず減らした方が低リスクです。
アルコールは発がん性が確認されており、がんについて「ここまでならリスクがゼロ」という安全な摂取量は確認されていません。
基本的には、飲酒量が増えるほどリスクも高くなります。
したがって、
「週6日は休肝日だから、土曜日だけ大量に飲めばいい」
とはなりません。
休肝日は、飲んだアルコールを帳消しにする仕組みではありません。
その大前提を置いたうえで、今回知りたいのはもう一段細かい話です。
週の総量を変えなくても、飲み方だけで差は出るのか。
週1日で2L。「まとめ飲み」は明らかに気になる
まずは最も極端な、
週1日 × 2,000ml
です。
5%ビール2Lなら、一度に摂取する純アルコールは約80g。
研究で一時大量飲酒を定義するときによく使われる「1回60g超」という水準も上回ります。
この飲み方については、かなり分かりやすい研究があります。
RoereckeとRehmによるメタ解析では、平均的なアルコール摂取量を考慮したうえでも、一時的に60g超などの大量飲酒をする人では、そうした飲み方をしない人より虚血性心疾患リスクが高くなっていました。
統合された相対リスクは1.45でした。
つまり、80gを週1回で飲むのと、20gを週4回飲むのは、「どちらも週80gだから同じ」とは言えません。
休肝日を増やすために、飲む日の一度に飲む量を大量に増やすことは、よい休肝日の作り方とは考えにくいでしょう。
では、毎日少しずつ飲むのが一番いい?
一度に大量に飲むのがよくないなら、次の発想は自然です。
- 80gを1回より、40gを2回
- 40gを2回より、20gを4回
- 20gを4回より、約11gを7回
細かく分散するほどいいのでは?
そうすると最終的には、「毎日少量飲酒」が最適に見えてきます。
ところが、研究はそう単純ではありません。
同じ酒量でも、毎日飲酒の方が肝硬変リスクが高かった
2023年に『Drug and Alcohol Review』に掲載されたメタ解析には、そのものずばりのタイトルが付いています。
“Liver holidays?”
つまり、「休肝日は意味があるのか?」という研究です。
このメタ解析では、単に「毎日飲む人は酒量も多いから肝硬変になりやすい」という話にならないよう、飲酒量を考慮したうえで、毎日飲酒と非毎日飲酒を比較しました。
結果は、
- 男性:毎日飲酒で肝硬変リスクは1.71倍
- 女性:同じく1.56倍
でした。
「週の総量さえ同じなら、少量を365日に分けるのが一番いい」とは、言いにくいのではないでしょうか。
※この研究は「毎日飲むと肝硬変になる」という意味ではありません。5つの観察研究を統合したメタ解析であり、毎日飲酒そのものが原因だと証明した実験でもありません。
ちなみに、「毎日飲むと常にアルコールが体内に残るから」という説明も正確ではありません。
少量のアルコールなら、通常は次の飲酒までずっと血中に残っているわけではありません。
問題になっているのは、毎日のようにエタノールを摂取し、その代謝を繰り返す飲酒パターンです。
このメタ解析の著者らは、アセトアルデヒドなどへの継続的な曝露が一つの可能性だと考察しています。
「週3〜4日」が浮かんでくる研究もある
では、「まとめ飲みでもない」「毎日でもない」
この中間はどうなのでしょうか。
約31万人の飲酒者を対象としたUK Biobankの研究では、平均的な週間アルコール摂取量などを調整したうえで、飲酒頻度を比較しています。
基準となったのは、週3〜4日飲む人でした。
これに対して、週1〜2日だけ飲む人では、
- 全死亡リスク:9%高い
- 主要心血管イベント:14%高い
という結果でした。
一方、毎日またはほぼ毎日飲む人では、肝硬変リスクが49%高くなっていました。
週3〜4日に分散して飲む人では、死亡や主要心血管イベントの予測確率が比較的低くなっています。
今回の4パターンでいう、週4日 × 500mlにかなり近い考え方です。
一度に飲み過ぎない。
しかし、毎日でもない。
この「中間」がよさそうに見えてきます。
日本人の研究でも「毎日飲む必要はない」ことが見えてくる
海外だけではありません。
2018年に『Journal of Epidemiology』に掲載されたJPHC Studyでは、日本人約10万3,000人を平均18.2年間追跡し、アルコール摂取量と「休肝日」の関係を調べています。
この研究が興味深いのは、かなり酒量が多い人だけではなく、週150g未満の比較的少ない飲酒者についても、飲む頻度を分けていることです。
男性の週150g未満の飲酒者では、毎日飲む人を基準にすると、週に1〜2日の休肝日がある人では全死亡リスクが低くなっていました。
がん死亡についても、休肝日がある複数の飲酒パターンで毎日飲酒より低い結果が観察されています。
一方で、「休肝日が3日なら2日より良い」「週3回飲酒が週4回より良い」というように、日数に応じてきれいにリスクが下がったわけではありません。
では結局、週に何日飲むのがいい?
ここまでの研究を、実際の飲み方に落とし込んでみます。
現時点で比較的言いやすいことは、3つです。
- 週の総アルコール量は少ない方がいい。
- 同じ総量なら、一度に大量にまとめる飲み方は避けた方がいい。
- 一回量を減らすために、わざわざ毎日飲む必要もない。
では、その間をどこに置くか。
現時点では、週3〜4日程度に分散して、残りの3〜4日はアルコールを飲まないというのが、一つの合理的な目安だと考えます。
一時大量飲酒も避けやすい。
毎日飲酒にもならない。
ただし、これは「週3〜4日が医学的に最適だと証明された」という意味ではありません。
研究によって最も良好に見える頻度は一致しておらず、日本人研究でも「週3〜4日だけが特別によい」という結果ではありません。
週3〜4日は、現在の研究から作ることのできる“実用上の有力な目安”と考えるのが適切でしょう。
4つの飲み方なら、どう考える?
最初の5%ビール週2Lに戻ります。
週1日 × 2,000ml
最も避けたい飲み方です。
休肝日は6日ありますが、一度に純アルコール約80g。
一時大量飲酒になるため、「休肝日が多いから健康的」とは言えません。
週2日 × 1,000ml
週1日で2Lよりは分散されています。
ただし、一度に約40g。
さらに一回量を減らす余地があります。
週4日 × 500ml
一回約20g。
一時大量飲酒を避けながら、週3日はアルコールを飲まない。
今回の4パターンの中では、現在の研究と最も素直に整合する、バランスのよい飲み方だと考えられます。
ただし、「週4が優勝」と実験で証明されたわけではありません。
週7日 × 約286ml
一回量は約11gで、最も少なくなります。
しかし毎日飲酒です。
同じ総量でも毎日飲酒と肝硬変リスクの関連が報告されている以上、「一回量が最小だから一番いい」とも言えません。
ただし、本当に健康リスクを下げたいなら話はもっと単純
ここまでは、あえて「週80gから絶対に減らさない」という条件で考えてきました。
でも、現実にはそんなルールはありません。
たとえば、毎日5%のビールを500ml飲んでいる人なら、
1日約20g × 7日で、週約140gの純アルコールを摂取しています。
これを、
- 週3日は、アルコール5%のビール500ml
- 週4日は、アルコール0.00%のビールテイスト飲料
に変える。
すると、アルコール入りのビールを楽しむ日は残したまま、週140g → 約60gまで減らせます。
約57%減です。
「週3日と週4日のどちらが医学的に最適なのか」という細かな議論より、こちらの方がずっと確かな話です。
摂取するアルコールそのものが減るからです。
「ビールを飲みたい」と「アルコールを飲みたい」は、同じではない
私は、アルコール入りのビールを否定したいわけではありません。
むしろ、私はクラフトビール愛好家です。
ビールは美味しい。
クラフトビールには、アルコール入りだからこそ成立する味わいもあります。
飲みたいビールがある日は、普通に楽しめばいいと思っています。
ただ、毎晩ビールを飲んでいる人が、毎晩エタノールまで欲しいとは限りません。
- 仕事が終わった
- 風呂に入った
- 夕食を食べる
そこで、冷たくて、香りがあって、苦味のある一杯を飲みたい。
その欲求と、「今日はアルコールを摂取したい」という欲求は別です。
だから、アルコール入りのビールを楽しむ日と、0.00%を楽しむ日を分ける。という方法があります。
ビールを楽しむ時間そのものをなくさずに、アルコールを飲む頻度と総量だけを減らす。
ノンアルコールビールには、そういう使い方もあります。
結論:休肝日は意味がある。ただし、まとめ飲みをしては本末転倒
休肝日には、意味があると考えてよさそうです。
ただし、
「休肝日を作れば、飲む日にまとめて大量に飲んでもいい」
という意味ではありません。
現在の研究を総合すると、飲酒するのであれば、
まず、週間の総アルコール量を抑える。
そのうえで、
一度に大量に飲まず、毎日飲み続けるのでもなく、週3〜4日程度に分散して、飲まない日も作る。
これは、現時点の研究から導ける、かなり合理的な飲み方の一つです。
そして、もっとアルコールを減らしたいなら、すべての日からビールをなくす必要もありません。
飲みたい日は、好きなビールを。
それ以外の日には、0.00%という選択肢もあります。
主要参考文献
-
Jani BD, et al. Association between patterns of alcohol consumption (beverage type, frequency and consumption with food) and risk of adverse health outcomes: a prospective cohort study. BMC Medicine. 2021;19:8. DOI: 10.1186/s12916-020-01878-2.
-
Llamosas-Falcón L, et al. Liver holidays? A meta-analysis of drinking the same amount of alcohol daily or non-daily and the risk for cirrhosis. Drug and Alcohol Review. 2023;42(1):119–124. DOI: 10.1111/dar.13563.
-
Saito E, et al. Impact of Alcohol Intake and Drinking Patterns on Mortality From All Causes and Major Causes of Death in a Japanese Population. Journal of Epidemiology. 2018;28(3):140–148. DOI: 10.2188/jea.JE20160200.
-
Roerecke M, Rehm J. Irregular heavy drinking occasions and risk of ischemic heart disease: a systematic review and meta-analysis. American Journal of Epidemiology. 2010;171(6):633–644. DOI: 10.1093/aje/kwp451.
-
World Health Organization. Alcohol / Alcohol and cancer. アルコール摂取による健康リスク、発がん性、低用量からのリスクについての公的情報。
※この記事は一般成人の飲酒パターンに関する研究を整理したものです。そもそも飲酒を避けるべき状況について「週3〜4日なら飲んでよい」という意味ではありません。