最近、体重が増えてきた。お腹も気になる。でもビールは好きだ。
そんなとき、「ビールってやっぱり太るの?」と気になるのは自然です。
結論から言えば、痩せたいなら、ビールを減らす意味はあります。
理由は、単に「ビールには糖質があるから」ではありません。
アルコールそのものにエネルギーがあります。
アルコールを摂取している間は、身体が脂肪を燃料として使う量が減ります。
さらに、酒からカロリーを摂ったからといって、その分だけ食事が自然に減るわけでもありません。
そして日本人男性をCTで調べた複数の研究では、飲酒量が多い人ほど内臓脂肪が多いという関連が報告されています。
ダイエット中に気にするべきなのは、「ビールの糖質」だけではありません。
ビールで太る理由は、糖質だけではない
ビールが太る理由として、まず糖質を思い浮かべる人は多いでしょう。
もちろん、ビールに含まれる糖質もエネルギーになります。
しかし、もう一つ大きいのがアルコールそのものです。
厚生労働省の健康情報では、アルコールは1gあたり約7.1kcalのエネルギーを持つとされています。
一般的な5%のビール350mLなら、純アルコール量は約14g。アルコールだけを計算しても、14g × 7.1kcal ≒ 約99kcalあります。
ここに糖質などのエネルギーが加わります。
つまり、ビール=糖質だから太るという理解では不十分です。
アルコール自体が、ビールのエネルギーのかなりの部分を占めています。
「エンプティカロリーだから太らない」は誤解
アルコールについて調べると、「エンプティカロリー」という言葉を見かけることがあります。
しかし、これは「カロリーが空っぽ」「身体に残らない」という意味ではありません。
アルコールは身体で代謝され、エネルギーとして利用されます。
そのため、「酒のカロリーは特殊だからノーカウントでいい」とは考えられません。
痩せたいのであれば、アルコール由来のエネルギーも普通に計算に入れる必要があります。
アルコールを飲むと、脂肪を燃料として使う量が減る
アルコールは、単に摂取カロリーを増やすだけではありません。
身体はアルコールを長期間ためておけないため、摂取するとその処理を優先します。
その間、体脂肪を燃料として使う割合が低下します。
健康な男性を代謝チャンバーに入れて24時間のエネルギー代謝を測定した研究では、食事にアルコールを追加した条件で脂質酸化が36%低下しました。
さらに興味深いのは、総摂取カロリーを増やさないよう、食事の脂質や炭水化物の一部をアルコールへ置き換えた条件です。
それでも、脂質酸化は31%低下しました。
つまり、「酒を飲んだ分だけカロリーが増えたから不利」というだけではありません。
アルコールを代謝している間は、身体が体脂肪を燃料として利用する量そのものが減ることが、人を対象とした実験で確認されています。
ただし、「酒を飲むと脂肪燃焼が完全に止まる」と表現するのは強すぎます。
正確には、アルコール摂取中は脂肪酸化が大きく抑えられると考えるのが適切です。
ビールを飲んだ分だけ、食事が減るわけでもない
ここでもう一つ問題があります。
仮にビールで150kcal摂っても、その分だけ夕食を150kcal減らせるなら、総摂取エネルギーは変わりません。
しかし実際には、人間はそこまできれいに帳尻を合わせてくれないようです。
2019年のシステマティックレビュー・メタ解析では、健康な成人701人を含む22研究を統合し、アルコールを摂取した場合としなかった場合の食事量を比較しています。
その結果、アルコールを摂取した条件では、
- 食事そのものからの摂取エネルギーが平均約82kcal増加
- アルコールを含めた総摂取エネルギーが平均約256kcal増加
していました。
つまり、酒からエネルギーを摂ったからといって、「今日はビールを飲んだから、その分ご飯はいらないな」と自然に調整されるわけではありません。
むしろ、酒のカロリーが追加されたうえで、食事も普通に入ってくる可能性があります。
「太るのはおつまみ。ビール自体は悪くない」も違う
ビールと一緒に食べるものが太りやすさに影響するのは事実です。
唐揚げ、フライドポテト、ピザ、締めのラーメン。
こうした食事を頻繁に組み合わせれば、総エネルギー摂取量は当然増えます。
だから「おつまみに気をつける」は正しい。
しかし、「太るのはおつまみだけ。ビールそのものは関係ない」というのも正しくありません。
ビール自体にエネルギーがあります。
アルコール摂取中は脂肪酸化が抑えられます。
さらに、酒を飲んだ分だけ食事が減るわけでもありません。
ダイエットでは、ビールか、おつまみかという二択ではなく、酒と食事を合わせた総摂取量を見る必要があります。
飲酒と内臓脂肪の関係は無視できない
体重を落としたいとき、どうしても体重計の数字ばかり見がちです。
しかし飲酒について考えるなら、内臓脂肪も無視できません。
滋賀医科大学などによるSESSA研究では、日本人男性998人の腹部脂肪をCTで直接測定しました。
その結果、飲酒量が多いほど、
- 内臓脂肪面積
- 腹部脂肪に占める内臓脂肪の割合
- 内臓脂肪と皮下脂肪の比率
が高いという関連が見られました。
さらに重要なのは、BMIを考慮しても、この関連が残ったことです。
一方、皮下脂肪面積には明確な関連が見られませんでした。
別の日本人男性301人をCTで調べた研究でも、アルコール摂取量と内臓脂肪の間に正の関連が報告されています。
つまり、日本人男性を対象にした複数の研究で、飲酒量が多い人ほど内臓脂肪が多いという同じ方向の結果が出ています。
※これらは観察研究なので、「酒を飲んだことが原因で内臓脂肪が増えた」と因果関係まで証明したものではありません。
それでも「酒を飲む人ほど体重が増える」と研究で一貫しないのはなぜ?
ここまで読むと、「それなら、酒を飲む人ほど明らかに太っているはずでは?」と思うかもしれません。
ところが、長期間の観察研究では、飲酒量とBMIや体重増加との関係は意外なほどきれいには揃っていません。
127研究をまとめたメタ解析では、横断研究では飲酒と過体重・腹部肥満との関連が見られ、とくに多量飲酒で関連が強くなりました。
一方、将来を追跡したコホート研究だけを見ると、飲酒と肥満との明確な関連は確認されませんでした。
2025年に米National Academiesが改めて研究をレビューした際も、中等量飲酒と長期的な体重変化について、強い結論を出せるほどのエビデンスはないと評価しています。
ただし、ここから、「なら酒は太らない」とは言えません。
飲酒する人としない人では、
- 食生活
- 運動習慣
- 喫煙
- 年齢
- 所得や職業
- 1回に飲む量
- 飲酒頻度
など、多くの条件が違います。
現実の生活では、アルコールだけを切り離して長期間比較するのが難しいのです。
一方で、
- アルコールにエネルギーがある
- アルコール摂取中に脂肪酸化が低下する
- 酒のエネルギーを食事で十分に相殺しにくい
- 飲酒量と内臓脂肪との関連が日本人研究で示されている
という個々の事実まで消えるわけではありません。
痩せたい人が「長期研究は一貫していないから、ビールは気にしなくていい」と考える理由にはなりません。
「ビール腹」は、本当にビールだけでできるのか
「ビールを飲むと腹が出る」。
いわゆる「ビール腹」はよく知られた言葉です。
では、ビールには脂肪をお腹だけにつける特殊な作用があるのでしょうか。
ドイツのEPIC-Potsdam研究では、男性7,876人、女性12,749人を約8.5年間追跡しました。
男性では、ビール摂取量が多いほど腹囲が増える傾向が見られました。
しかし、同時に起きた全身の体重増加を考慮すると、その関連の大部分は弱まりました。
つまり、ビールを飲むと、その糖質が腹だけに集中的について「ビール腹」になるという単純な説明は、研究からは支持されていません。
ただし、これは「飲酒と腹部脂肪は無関係」という意味でもありません。
日本人のCT研究では飲酒量と内臓脂肪との関連が確認されています。
「ビール腹」という言葉に引っ張られるより、飲酒量、総エネルギー摂取、体重、腹囲、内臓脂肪をまとめて見る方が実態に近いでしょう。
痩せたいけれど、ビールも飲みたい。どうすればいい?
ビールが好きだからといって、ダイエット中は一滴も飲んではいけない、という話ではありません。
ただし、体重や体脂肪を落としたいなら、アルコールを減らすことには合理的な意味があります。
一番シンプルなのは、量を減らすことです。
- 毎日2本なら1本にする
- 500mLを350mLにする
- 毎日飲んでいるなら、飲まない日を作る
- そして、酒と一緒に食べるものまで含めて総摂取エネルギーを見る
「太りにくい酒を探す」より先に、自分がどれだけアルコールを飲んでいるかを見る方が本質的です。
ビールの一部を0.00%に置き換えるのも一つの方法
すべての一杯をアルコール入りにする必要もありません。
普通のビールの一部を0.00%のビールテイスト飲料に置き換えれば、少なくともアルコール由来のエネルギーはなくなります。
また、ここまで見てきたアルコール摂取中の脂肪酸化への作用も避けられます。
もちろん、0.00%=ゼロカロリーとは限りません。
ノンアルコールビールやビールテイスト飲料にも、商品によって糖質やエネルギーがあります。
したがって、0.00%を飲めば痩せるという話ではありません。
それでも、普通のビールを0.00%へ置き換えることで、ダイエット中に減らしたいアルコールそのものを取り除けることには明確な意味があります。
痩せたいなら、「ビールの糖質」だけを見ない
ビールは太るのか。
ダイエットという観点から考えるなら、ビールを減らす意味はあります。
理由は糖質だけではありません。
アルコール自体にエネルギーがあります。
アルコールを摂取している間は脂肪酸化が抑えられます。
酒からエネルギーを摂った分だけ、食事が自然に減るわけでもありません。
そして、日本人男性をCTで調べた複数の研究では、飲酒量が多い人ほど内臓脂肪が多いという関連が報告されています。
長期的な体重増加と飲酒の関係そのものは、研究によって結果が揃っていません。
しかし、痩せたい人にとって重要なのは「酒を飲んだら必ず何kg太るのか」を決めることではありません。
自分の減量を邪魔する要素を、減らせるところから減らすことです。
- ビールの量を減らす
- 飲まない日を作る
- 一部を0.00%に置き換える
ビールを楽しみながら痩せたいのであれば、まずはアルコールを飲む量そのものを減らすところから考えるのが合理的です。
主な参考文献
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厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「アルコールのエネルギー(カロリー)」
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