世界で最もノンアルコールビールを売っている会社は、どこなのだろう。
世界最大のビールメーカーといえばアンハイザー・ブッシュ・インベブ(AB InBev)です。
下記のような、巨大ブランドをいくつも持っています。
- Corona
- Budweiser
- Stella Artois
では、ノンアルコールビールでも世界一なのか。
一方、世界中で見かけるノンアルコールビールといえばHeineken 0.0があります。
日本にはドライゼロやオールフリーがある。
ドイツやスペインでは、日本以上にノンアルコールビールが日常的に飲まれている。
結局、世界ではどの会社が一番大きいのでしょうか。
各社のIR、業界団体、市場統計、商品別販売数量を調べ、世界のノンアルコールビールメーカーを並べてみました。
世界のノンアルコールビールメーカーTOP10を推定
結論からいきます。
| 順位 | メーカー | 規模を示す主な公開データ | 350ml換算 |
|---|---|---|---|
| 1〜2位 | AB InBev | ノンアルビール売上高で世界首位 | ― |
| 1〜2位 | Heineken | Heineken 0.0が世界0.0市場の約18% | ― |
| 3位 | Carlsberg | 約4.44億L | 約12.7億本 |
| 4位候補 | アサヒ | 世界non/low市場で上位実績、日本・欧州・豪州に大型ブランド | ― |
| 5〜7位候補 | Mahou San Miguel | スペイン市場で金額シェア34.7% | 1億L級候補 |
| 5〜7位候補 | サントリー | オールフリーだけで約1.06億L | 約3.04億本 |
| 5〜7位候補 | Radeberger Group | ドイツのノンアルビールの6本に1本超 | 1億L級候補 |
| 8位前後 | Athletic Brewing | 約5,630万L | 約1.61億本 |
| 9位前後 | Krombacher | Pils Alkoholfreiだけで約4,930万L | 約1.41億本+α |
| 10位圏 | Bitburger | ドイツ0.0市場で金額シェア30%超 | ― |
※順位は公開情報からの推定です。メーカー各社が同じ基準でノンアルコールビール単独の世界販売量を開示しているわけではないため、特に4位以下は前後する可能性があります。10位圏にはErdingerやRoyal Swinkelsなども入る可能性があります。
まず目立つのは、AB InBevとHeineken。
この2社が別格です。
しかし、その下に年間10億本を超えるCarlsbergがいて、日本メーカーも普通に世界上位へ入ってくる。
さらにTOP10圏には、創業10年にも満たないノンアル専業メーカーまで登場します。
順番に見ていきます。
世界1位はAB InBevか、Heinekenか
2026年5月、AB InBevはNielsenのデータをもとに、自社がノンアルコールビールの売上金額で世界首位になったと発表しました。
2026年第1四半期だけでも同社のノンアルコールビール売上高は前年同期比27%増。Corona Cero、Budweiser Zero、Stella Artois 0.0など、巨大ブランドをそのままノンアル市場へ展開できることが強みです。
売上高で判断するなら、現在の世界1位はAB InBevと考えてよさそうです。
ただし、販売「量」で見ると話は簡単ではありません。
Heineken 0.0は、世界のアルコール0.0%ビールカテゴリーで約18%のシェアを持つとされています。
また、HeinekenグループはHeineken 0.0以外にも、各国のブランドでゼロアルコール商品を展開しています。
つまり、企業全体のノンアル売上高ではAB InBevが世界首位。
一方、世界最大級の単一ノンアルブランドはHeineken 0.0。
両社ともノンアルコールビールの世界販売L数そのものは開示していません。
販売量ランキングとしては、現状ではこの2社を「世界2強」とするのが最も妥当と考えます。
3位Carlsbergは年間約13億本
ここから数字が一気に具体的になります。
Carlsbergは2025年のグループ総販売量が1億4,800万hl。
そのうちAlcohol-Free Brews(アルコール0.5%未満の発酵飲料)が3%を占めています。
計算すると、1億4,800万hl × 3% = 444万hl
つまり、約4億4,400万L。
350ml換算では、約12億7,000万本。
年間10億本を軽く超えます。
日本で生活していると、Carlsbergのノンアルコールビールを頻繁に見るわけではありません。
それでも世界全体では、これほど巨大な事業です。
理由は、Carlsberg 0.0だけを売っているわけではないから。
フランスのTourtel Twist、ポーランドのOkocim 0.0など、各国のローカルブランドまで含めてAlcohol-Free Brewsを展開しています。
2025年だけでも50種類の新しいAlcohol-Free Brewを投入しました。
世界のノンアル市場を見るときは、「日本で有名な商品」だけを見ていると規模を大きく見誤ります。
アサヒも世界上位。ドライゼロだけの会社ではない
日本メーカーの筆頭候補がアサヒグループです。
古いデータではありますが、Euromonitorの2022年non/low alcohol beer市場では、売上金額シェアは、
- 1位 Heineken:17.1%
- 2位 AB InBev:15.3%
- 3位 Asahi Group:6.5%
でした。
この統計には低アルコール商品まで含まれるため、今回のランキングへそのまま数字を移すことはできません。
それでも、アサヒが世界規模で大きなプレイヤーであることは分かります。
日本には、
- アサヒドライゼロ
- アサヒゼロ
がある。
アサヒゼロだけでも2025年には256万箱を販売しました。大びん633ml×20本換算なので、約3,240万Lです。
ドライゼロは2016年から2025年まで、国内ノンアルコール飲料市場で10年連続売上金額No.1です。
さらに日本ではあまり見かけませんが、海外には、
- Peroni Nastro Azzurro 0.0%
- Asahi Super Dry 0.0%
- Birell
- Great Northern Zero
- Carlton Zero
などがあります。
欧州では2024年上期だけでも、ノンアルコールビール販売量が前年同期比14%増加していました。
「アサヒのノンアル=ドライゼロ」と考えると、実際の世界事業をかなり小さく見積もることになります。
オールフリーだけで年間約3億本
サントリーはもっと分かりやすい数字を公表しています。
2023年の「オールフリー」ブランド販売数量は840万ケースでした。
ここでいう1ケースは、633ml×20本=12.66L。
したがって、840万ケース × 12.66L = 約1億634万L。
350ml換算なら、約3億400万本。
ほぼ日本中心の1ブランドだけで、年間3億本級です。
Carlsbergの約12.7億本と比べれば小さく見えます。
しかし逆に考えると、一つの国の一つのノンアルブランドだけで3億本売れている。
日本のノンアルコールビール市場が世界的にも成熟していることが分かります。
スペインには、日本人がほとんど知らない巨大メーカーがいる
世界のノンアル市場を調べていると、何度も出てくる国があります。
スペインです。
2025年のスペインでは、ノンアルコールビールが327万8,816hl=約3億2,800万L販売されました。
その巨大市場で首位なのが、Mahou San Miguelです。
2026年時点で食品流通チャネルにおける金額シェアは34.7%。
しかも販売量では、
- Mahou 0,0 Tostada
- San Miguel 0,0
- Mahou Sin
が1〜3位を占めています。
金額シェアと販売量シェアは同じではありませんが、スペイン市場の3分の1前後を握る企業である以上、年間1億L級のノンアルメーカーである可能性は十分にあります。
日本ではMahouという名前を知らない人の方が多いでしょう。
しかし「ノンアルコールビール」という軸だけで世界を見ると、世界最大級メーカーの一つです。
ドイツでは年間6億L以上のノンアルビールが造られている
さらに巨大なのがドイツです。
2024年のドイツにおけるアルコールフリービール生産量は約5億7,900万L。
2014年から10年間で96.1%増え、ほぼ倍になりました。
さらに2025年には約6億1,600万Lまで増えています。
つまり、ドイツ一国のノンアルコールビール生産量だけでCarlsbergの世界販売量を上回る規模です。
この市場に「日本ではあまり知られていない巨大メーカー」が何社も存在します。
代表例がRadeberger Group。
Jever FunやClausthalerなどを抱え、同社幹部によれば現在、ドイツで飲まれるノンアルコールビールの6本に1本以上がRadeberger Groupの商品です。
単純にドイツ全体の生産量を6分の1することはできませんが、1億L級のプレイヤーである可能性を示すには十分な規模感です。
KrombacherはノンアルPilsだけで年間1.4億本
もう一社、具体的な数量が取れるドイツ企業があります。
Krombacherです。
2025年の「Krombacher Pils Alkoholfrei / 0.0%」の出荷量は、49万3,000hl。
つまり、4,930万L。
350ml換算では、約1億4,100万本。
しかもこれはピルスナータイプだけです。
KrombacherにはアルコールフリーのRadlerやヴァイツェンもあります。
したがって会社全体のノンアルコールビール数量は、これより大きい。
世界TOP10の下位争いが年間1億本を超えるレベルで行われていることが分かります。
Bitburgerも無視できない
ドイツではBitburgerも強い。
2025年、Bitburger 0.0シリーズはドイツの0.0ビール市場で金額シェア30%以上を獲得しました。
さらに売上高は前年比12%以上増えています。
販売L数は公表していないため、KrombacherやAthleticと直接比較することはできません。
しかしドイツ国内の0.0市場でこれだけ大きなシェアを持つ以上、TOP10圏の有力候補です。
ErdingerやRoyal Swinkelsなども含め、世界ランキングの8〜10位あたりはかなり混戦と考えた方がよさそうです。
その大手メーカー群に、Athletic Brewingが混ざっている
ここまで出てきたのは、ほとんどが長い歴史を持つ巨大ビールメーカーです。
そこに突然、一社だけ毛色の違う会社が入ってきます。
Athletic Brewing。
2017年創業の米国企業で、基本的にノンアルコールビールだけを造っています。
Brewers Associationによると、Athletic Brewingの2025年販売量は、48万US beer barrel。1 US beer barrelは約117.3Lなので、約5,630万L。
350ml換算すると、約1億6,100万本。
オールフリーの約3億本には及びません。
それでも、創業10年未満のノンアル専門会社が年間1億本をはるかに超えている。
そしてKrombacherなど、欧州の大手老舗メーカーと同じTOP10圏に入ってきている。
これはかなり異例です。
Athleticをはじめとする「ノンアルコールビール専業メーカー」の世界は、大手メーカーランキングとは別に掘り下げる価値があります。
世界では年間100億本近い0.0ビールが動いている
企業ではなく、市場全体まで広げてみます。
Heinekenは2025年時点で、世界のアルコール0.0%ビール市場が世界ビール販売量の1.7%を占めるとしています。
一方、キリンの調査によると、2024年の世界ビール総消費量は、約1億9,412万kl。
この2つを単純に掛け合わせると、約33億L。
350ml換算では、約94億本。
世界では、年間100億本に迫る規模で、ノンアルコールビールが消費されていると、推測できます。
もちろん異なる資料を組み合わせた概算です。
それでも「世界の0.0ビール市場がどのくらいの数量なのか」を理解するには十分でしょう。
ところで、このランキングは意外と作るのが難しい
ここまでランキングを普通に並べてきましたが、実は「世界のノンアルコールビールメーカー販売量ランキング」という統計は簡単には見つかりません。
理由は主に3つあります。
「ノンアルコール」の定義が世界で違う
日本の大手ノンアルコールビールテイスト飲料は0.00%が一般的です。
一方、ドイツや英国、米国などでは0.5%以下の商品もAlcohol-FreeやNon-Alcoholicとして扱われます。
そこでこの記事では、世界市場を比較するため、原則としてABV0.5%以下を対象にしました。
「non/low」の市場統計をそのまま使えない
調査会社では「non/low alcohol beer」とまとめて集計されることがあります。
Euromonitorによる2022年のnon/low alcohol beer市場は65億Lでした。
しかし、ここにはノンアルだけでなく低アルコール商品も含まれます。
地域によってカテゴリーの中身も違う。
そのため、既存の市場シェアランキングをそのまま「世界ノンアルコールビールランキング」と呼ぶことは避けました。
そもそも企業が販売L数をあまり公開していない
Carlsbergのように、総販売量 × Alcohol-Free比率まで開示してくれる企業は珍しい存在です。
日本企業は商品ごとのケース数を公表することがありますが、世界事業を合算したノンアル数量はなかなか出てきません。
欧州の非上場メーカーでは、市場シェアしか分からない場合もあります。
そこで今回のランキングでは、
公式販売数量 → 商品別販売数量 → 市場シェア → その他の公開情報
の順で規模を判断しました。
なので、1位から10位まで1L単位で綺麗に並べることはできません。
ただし、世界の「勢力図」はかなり見えてきます。
世界のノンアル市場は「2強+巨大ローカル勢+新興勢力」
今回調べてみて、一番面白かったのはここでした。
世界市場の構造は、おおまかに、
- アンハイザー・ブッシュ・インベブ / ハイネケン
-
カールスバーグ
-
アサヒ
-
Mahou / サントリー / Radeberger
- Athletic / Krombacher / Bitburgerなど
と見ることができます。
まずAB InBevとHeinekenという巨大グローバル企業がいる。
Carlsbergも年間10億本を超える。
その下には、アサヒやサントリーのような日本企業だけでなく、MahouやRadebergerのように巨大な国内市場を握る企業がいる。
さらに、その大手メーカーの間へAthletic Brewingのような新興ノンアル専業企業が入り始めています。
日本のスーパーだけを見ていると、ノンアルコールビールは「大手メーカーが作るラガー系ビールの代替品」に見えるかもしれません。
世界まで広げると、景色はかなり違います。
- 年間10億本以上を売るメーカーがある
- 一国だけで年間6億L以上を生産する市場がある
- 創業10年未満で年間1億本以上を売る会社まで現れている
ノンアルコールビールは、もうビール市場の片隅にある小さなカテゴリーとは言いにくい。
世界の巨大ビールメーカーも、新しいブルワリーも、本気で取りにいく市場になっています。
主な参考資料
-
AB InBev:2026年第1四半期決算、Nielsenによるno-alcohol beer世界首位(value)
-
HEINEKEN:世界0.0市場、Heineken 0.0の世界シェア・展開状況
-
Carlsberg Group:2025 Annual Report、Alcohol-Free Brews構成比
-
Agriculture and Agri-Food Canada / Euromonitor:世界non/low alcohol beer市場
-
Asahi Group / アサヒビール:欧州ノンアル事業、アサヒゼロ、ドライゼロ
-
サントリー:2023年オールフリー販売数量
-
Cerveceros de España / Mahou San Miguel:スペイン市場販売量・市場シェア
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ドイツ連邦統計局:アルコールフリービール生産量
-
Radeberger Group関連資料:ドイツ市場での規模
-
Krombacher:2025年販売数量
-
Bitburger:2025年0.0市場シェア
-
Brewers Association:Athletic Brewing 2025販売量
-
キリンホールディングス:2024年世界ビール消費量