サウナでたっぷり汗をかいた後の、冷たいビール。
最高ですよね。
ただ、身体のことだけを考えるなら、サウナ直後に5%前後の通常のビールを飲むのは、あまり好ましい選択とは言えません。
発汗後に通常濃度のビールを飲ませた研究では、水分の回復に不利な結果が出ています。
アルコールは血圧だけでなく、判断力やバランスにも影響します。
一方で、よく言われる「サウナで脱水しているところに、アルコールの利尿作用が重なってさらに脱水する」という説明は、少し単純化しすぎです。
サウナ後のビールで気にしたいのは、脱水だけではありません。
何がどこまで分かっているのか、研究から整理してみます。
結論:サウナ直後の5%ビールは、身体の回復という点ではあまり向いていない
サウナ直後の身体は、単に「喉が渇いている」だけではありません。
発汗によって水分を失い、体温、心拍、血圧なども平常へ戻る途中です。
そこへ5%前後のビールを飲むと、さらにアルコールの作用が加わります。
研究から特に気になるのは、次の3点です。
- 発汗後の水分回復に不利になり得る
- 血圧など循環への影響が重なる可能性がある
- 判断力やバランスが低下する
「サウナ後にビールを一口飲んだら危険」という話ではありません。
一方で、サウナ直後の水分補給として、あえて5%ビールを選ぶ身体上のメリットも見当たりません。
この記事に記載するのは、「あくまで身体上のメリット」についてです。「サウナ後のビールは気持ちいいよね」という精神的な満足については、触れません。(むしろ筆者としては、その気持ちよさに大いに共感します)
発汗後に5%ビールを飲むと、水分の回復はどうなる?
サウナ後のビールを直接比較した研究は多くありません。
そこで参考になるのが、運動で汗をかいた後にアルコール濃度の異なるビールを飲ませた研究です。
サウナと運動は同じではありませんが、「汗をかいて水分を失った後」という点では参考になります。
2016年の研究では、健康な男性11人を運動で軽く脱水させた後、
- 0.0%ビール
- 2%ビール
- 5%ビール
- 水
- アイソトニック飲料
のいずれかを飲ませました。
5時間後に身体に保持されていた水分の割合は、
- 0.0%ビール:約36%
- 2%ビール:約36%
- 5%ビール:約21%
- 水:約34%
- アイソトニック飲料:約42%
でした。
5%ビールが最も低い結果です。
ただし、5時間後の水分保持率について飲料間の差は統計学的には明確ではありませんでした。
そのため、この研究だけで「5%ビールは必ず水分回復を妨げる」と断定することはできません。
一方、飲んだ1時間後では、5%ビールはアイソトニック飲料より尿量が有意に多くなっています。
別の研究でも似た方向の結果が出ています。
若い男性11人を運動で体重の約2.1%脱水させた後、水、低アルコールビール、4.6%ビールを飲ませたところ、3時間の尿量は、
- 水:約774mL
- 低アルコールビール:約745mL
- 4.6%ビール:約1,218mL
でした。
4.6%ビールでは、バランス能力の一部も悪化しています。
この実験では平均約1.6Lを1時間で飲んでいるため、サウナ後にビールを1杯飲む場面とはかなり条件が違います。
それでも、少なくとも、「発汗後の水分回復のために、普通のビールを積極的に選ぶ理由はない」とは言えそうです。
「ビールを飲むと、利尿作用でさらに脱水する」は本当?
ここは少し意外です。
アルコールには尿量を増やす作用があります。
そのため、「サウナで汗をかく → 脱水する → ビールを飲む → 利尿作用でもっと脱水する」と説明されることがあります。
ところが、人体ではここまで単純ではありません。
2010年の研究では、男性12人にアルコール0%のビールまたは4%ビールを1L飲ませました。
身体の水分が十分な状態では、4%ビールの方が尿量が増えました。
ところが、運動によって体重を約1.9%減らした状態では、アルコールあり・なしによる尿量の差が統計学的に明確ではなくなりました。
身体がすでに水分を失っていると、水を保持しようとする調節が強まり、アルコールの利尿作用も弱くなると考えられています。
つまり、「サウナで脱水しているところに酒を飲むと、利尿作用で水分がどんどん抜けていく」と単純に足し算するのは正確ではありません。
では、サウナ後のビールは思ったほど問題ではないのでしょうか。
そうとも言えません。
アルコールの問題は、尿量だけではないからです。
サウナ後のアルコールで気にしたいのは、脱水だけではない
血圧や循環への影響が重なる可能性がある
サウナに入ると、身体は熱を逃がすために皮膚の血管を広げ、心拍数を上げます。
血圧の動きは条件によって異なります。サウナ中に上昇した研究もあれば、退出後には開始前より低下した研究もあります。
つまり、サウナを出た瞬間に身体が平常へ戻るわけではありません。
サウナとアルコールを直接組み合わせた古い小規模研究では、健康な男性10人に多量の飲酒を伴うサウナ浴を行わせたところ、アルコールなしではほぼ維持された収縮期血圧が、アルコールありでは平均136mmHgから113mmHgへ低下しました。
ただし、これは多量飲酒とサウナを組み合わせた研究です。
「サウナを終えてから普通のビールを1杯飲む」状況を再現したものではありません。
それでも、サウナによる循環の変化とアルコールが重なると、短期的な血圧低下が強まる可能性があることは示しています。
酔いとバランス低下もある
アルコールを飲めば、当然ながら酔います。
先ほどの発汗後の研究でも、4.6%ビールを飲んだ条件ではバランス能力の一部が悪化しました。
サウナ施設には、濡れた床、段差、浴槽、水風呂があります。
そこへ判断力やバランスの低下が加われば、転倒などの事故につながりかねません。
消費者庁も、飲酒後や二日酔いの状態でのサウナ利用を避けるよう注意を呼びかけています。
アルコールを飲み始めたら、その日のサウナと水風呂は終了。
これは分かりやすい線引きです。
「ビール1杯」でも、5%・500mLなら純アルコールは20g
「たったビール1本」と感じても、容量と度数によって身体に入るアルコール量は変わります。
厚生労働省が示す計算式では、純アルコール量=飲酒量(mL)×アルコール度数×0.8です。
5%のビールを500mL飲めば、500 × 0.05 × 0.8=20gの純アルコールを摂ることになります。
「サウナ後は普段の何倍も酔いやすい」といったことを示す十分な研究は確認できません。
ただ、サウナ後だからアルコールそのものが消えるわけでもありません。
サウナ後は何分待てばビールを飲んでいい?
「サウナ後30分なら大丈夫」「1時間待てば飲んでもいい」という話を見かけることがあります。
しかし、健康な成人なら○分後から安全に飲める、という医学的に確立した基準はありません。
消費者庁の資料には、サウナ後は血圧が安定するまで30分程度休むという専門家の目安があります。
ただし、これは、「30分経てばアルコールを飲んでも安全」という意味ではありません。
同じ30分でも、1セットだけ入った人と、高温サウナと水風呂を何度も往復した人では身体の状態が違います。
時間そのものより、
- 強いほてりが収まっている
- 息や動悸が落ち着いている
- めまい、ふらつき、吐き気、頭痛がない
- その日のサウナと水風呂を完全に終えている
- 飲酒後に運転しない
といった点を見る方が現実的です。
体調に違和感があるなら、時間が経っていても飲まない方がいいでしょう。
それでも、サウナ後のビールはうまい
ここまで身体への影響を見てきましたが、「だからサウナ後にビールを飲みたくなるのは間違っている」という話ではありません。
汗をかいた後に、冷えたビールを飲む。
炭酸が喉に入り、ホップや麦芽の香りを感じる。
気持ちいいのは自然です。
冷たさや炭酸が「喉の渇きが癒えた」という感覚を強めることも実験で確認されています。
そこに、
- ビールの香り
- 苦味
- 炭酸
- 冷たさ
- サウナを終えた解放感
- 一杯飲むという行為そのもの
が重なります。
身体にとって最適かどうかと、美味しいかどうかは別です。
だからこそ、「サウナ後の一杯を楽しみたい。でもアルコールまで必要なのか?」という問いが出てきます。
0.00%ノンアルコールビールならどうなのか
ここでは話がかなり変わります。
先ほどの2016年の研究では、発汗後の5時間後の水分保持率は、
- 0.0%ビール:約36%
- 水:約34%
でした。統計学的な差はありません。
つまり、0.00%ビールが水より優れた水分補給飲料だとは言えません。
しかし逆に、水の方が0.00%ビールより優れているとも、この研究では示されていません。
現在ある研究は少なく、しかもサウナ後ではなく運動後の男性11人を対象にしたものです。
したがって、水と0.00%ビールが完全に同じだと証明されたわけではありません。
一方で、「サウナ後は必ず先に水を飲み、ノンアルコールビールはその後にしなければならない」という順番にも、明確な科学的根拠は見当たりません。
普通にサウナを楽しんだ後、「冷たい0.00%ビールが飲みたい」のであれば、それを最初の一杯として飲むことを、水分補給の観点から否定する十分な根拠は今のところありません。
ただし、大量に汗をかいた場合や、明らかな脱水症状がある場合には話が別です。
その場合は、水かノンアルかという二択ではなく、ナトリウムなどの電解質をどう補うかも考える必要があります。
サウナ後のビール、結局どうすればいい?
ここまでをまとめると、結論はシンプルです。
サウナ直後に5%前後の通常のビールを飲むことは、身体の回復という点ではあまり好ましいとは言えません。
発汗後の水分回復に不利になる可能性があり、アルコールによる血圧、判断力、バランスへの影響も加わります。
ただし、「アルコールの利尿作用で、一気に脱水するから危険」とだけ説明するのも正確ではありません。
サウナ後のアルコールで問題になるのは、脱水だけではないのです。
一方、0.00%ノンアルコールビールについては、現在の限られた研究では、水より水分保持に劣るとは示されていません。
サウナ後に欲しいものが、冷たさ、炭酸、ホップの香り、ビールらしい苦味、そして一杯飲む時間そのものなのであれば、そこからアルコールだけを外すという選び方もできます。
ビールを飲む楽しみそのものまで、手放す必要はありません。
ASTROCAは、アルコール0.00%でもクラフトビールらしい香りや味わいを楽しめる選択肢を目指して開発しています。
よくある質問
サウナ後にビールを飲むと脱水する?
アルコール濃度、飲む量、飲む前の水分状態によって変わります。
4〜5%前後のビールを発汗後に多く飲ませた研究では、尿量が増えたり、水分の回復に不利な結果が出たりしています。
一方、すでに水分を失った状態では、アルコールによる尿量増加が明確に出なかった研究もあります。
「ビールを飲むと、飲んだ量以上の水分を必ず失う」と一律に説明するのは正確ではありません。
サウナ後は何分待てばビールを飲める?
30分や1時間で安全になるという確立した基準はありません。
時計だけでなく、動悸、めまい、ふらつき、吐き気などがないかを確認し、その日のサウナを完全に終えてから判断してください。
サウナ後のノンアルコールビールは水分補給になる?
0.0%ビールと水を直接比較した小規模な発汗後研究では、水分保持や尿量に明確な差は確認されませんでした。
したがって、0.00%ビールが水より優れているとは言えませんが、水より劣るとも示されていません。
ビールを飲んだ後にもう一度サウナへ入ってもいい?
避けた方がいいでしょう。
飲酒後は判断力やバランスが低下します。消費者庁も飲酒後のサウナ利用を避けるよう案内しています。
飲み始めたら、その日のサウナと水風呂は終了と考えるのが安全です。
二日酔いをサウナで治せる?
おすすめできません。
二日酔いでは頭痛、吐き気、動悸、脱水感などがあることがあり、高温と発汗をさらに加えることになります。
汗をかけばアルコールが早く抜ける、という確かな根拠もありません。
参考文献・参考資料
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