寝る前にビールを飲むと睡眠の質はどうなる?「眠くなる」と「よく眠れる」の違い

公開: 更新: 執筆・編集: アストローカ創業者

「ビールを飲むと、よく眠れる」

そう感じたことがある人は少なくないと思います。

実際、お酒を飲むと眠くなる。そのままいつもより早く寝落ちすることもあります。


では、本当に「よく眠れている」のでしょうか。

2025年に発表された、健康な成人を対象とする27研究の系統的レビュー・メタ解析を見ると、興味深いことが分かります。

比較的少ないアルコールから変化が確認されたのは、レム睡眠でした。

一方で、一般によく言われる「お酒を飲むと寝つきがよくなる」効果が明確になったのは、かなり多くのアルコールを摂取した条件です。

 

つまり、「眠くなる、寝付く」と「よく眠れる」は、同じではありません。

 

この記事では、寝る前のビールによって睡眠の何が実際に変わるのかを、最新の研究から整理します。

結論:最もはっきり変わっていたのはレム睡眠

まず、2025年のメタ解析の結果を整理してみます。

この研究では、健康な18〜70歳の成人を対象とし、一定量のアルコールを摂取させた後の夜間睡眠を測定した27研究が検討されました。

主な結果は次の通りです。

睡眠の指標 アルコール摂取後の結果
寝つくまでの時間 高用量では短くなった
レム睡眠に入るまでの時間 長くなった
レム睡眠 短くなった
総睡眠時間 明確な差を決められなかった
睡眠効率 明確な差を決められなかった
入眠後に起きている時間 明確な差を決められなかった
N3・N4など深い睡眠の時間 統合結果では明確な差なし

 

特に一貫していたのがレム睡眠です。

アルコールを飲んだ夜には、レム睡眠に入るまでが遅くなり、レム睡眠そのものの時間も短くなりました。

しかも、飲酒量が増えるほど影響が強くなる傾向が確認されています。

 

ただし、「お酒を飲むと睡眠が全部浅くなる」というわけではありません。

最新のメタ解析で最も明瞭だったのは、睡眠時間全体の短縮でも、中途覚醒でもなく、睡眠の構造、とくにレム睡眠の変化でした。

「ビールを飲むと寝つきがよくなる」は本当?

これは少し意外な結果でした。

アルコールには中枢神経を抑制する作用があります。

GABA、グルタミン酸、アデノシンなどの神経伝達系に作用し、摂取量が増えると鎮静作用が強くなります。

だから、「飲んでいたら眠くなった」「そのまま寝落ちした」という感覚自体は不思議ではありません。

 

ところが、実際に寝つくまでの時間を測ると、少量のアルコールで明確に短くなっていたわけではありません。

2025年のメタ解析では、アルコール摂取時の入眠時間は平均すると対照条件より約2分短かったものの、この差は統計的に明確ではありませんでした。

飲酒量が増えるほど寝つきは早くなる傾向があり、明確な短縮が確認されたのは、約0.85g/kgという高用量付近でした。研究者らはこれをおよそ5 standard drinksに相当すると説明しています。

standard drinkは国によって定義が異なるため、「日本のビール5杯」と読み替えることはできません。

重要なのは、「少しお酒を飲めば、寝つきがよくなる」とまでは研究では確認されなかったことです。

アルコールで眠気を感じることと、実際の入眠が早くなり、一晩の睡眠まで良くなることは別問題です。

 

少ないアルコールでもレム睡眠は変わる

一方、レム睡眠への影響は、もっと少ない量から確認されました。

2025年のメタ解析では、0.50g/kg以下を低用量として分類しています。

この範囲からレム睡眠時間の減少が確認され、飲酒量が増えるほど変化も大きくなりました。

 

レム睡眠は、通常の一晩の睡眠を構成する重要な睡眠段階の一つです。

寝つくまでの時間だけ見れば「よく眠れた」と感じても、一晩の睡眠構造は普段と変わっている可能性があります。

ここが、寝酒を考えるうえで一番重要なポイントです。

 

では、ビール1缶でも睡眠は変わる?

ここが一番気になるところでしょう。

厚生労働省が示す計算式では、純アルコール量は、飲酒量(ml)× アルコール度数 × 0.8で計算できます。

350ml・アルコール度数5%のビールなら、350 × 0.05 × 0.8 = 約14gです。

 

では、「ビール1缶でもレム睡眠が減る」と言えるのでしょうか。

 

ここは慎重に考える必要があります。

2025年のメタ解析では、0.50g/kg以下という「低用量」のグループでもレム睡眠への影響が確認されました。

一般的なビール1缶14gは、多くの成人ではこの「低用量」の範囲に入ります。

 

この研究を見る限り、「1缶でも必ず睡眠が悪くなる」とまでは言えませんが、一方で、「1缶程度なら睡眠にはまったく影響しない」と考える根拠もありません。

 

現在の研究から言えるのは、アルコールによる睡眠構造の変化は、多量飲酒だけで起きる現象ではなく、少量飲酒でも起きるのかもしれないというところまでです。

 

寝酒をすると、夜中に目が覚めやすくなる?

目が覚めやすくなることはあります。

ただし、アルコールを飲めば必ず中途覚醒が増える、とまでは言えません。

厚生労働省の睡眠情報では、寝酒によって睡眠の後半が乱れ、中途覚醒が増えることがあると説明されています。

一方、2025年の27研究のメタ解析では、「眠った後に起きていた時間」について、アルコールを飲んだ場合と飲まなかった場合の差は研究によってばらつきが大きく、全体として明確な結論は出ませんでした。

つまり、中途覚醒は起こり得るものの、アルコールによる睡眠への影響として最も一貫して確認されているわけではありません。

 

現在の研究でよりはっきりしているのは、レム睡眠が減り、レム睡眠に入るまでの時間が長くなることです。

 

ただし、ビールにはもう一つ事情があります。

飲む水分量が多いことです。

350mlや500mlの液体を寝る前に飲み、さらにアルコールによる尿量増加も重なるため、夜中にトイレへ行くことで睡眠が中断されることがあります。

したがって、寝る前のビールでは、

  • アルコールによる睡眠構造の変化
  • 夜間の排尿による睡眠の中断

を分けて考えると分かりやすいでしょう。

 

寝る何時間前までならビールを飲んでいい?

「寝る3時間前までなら大丈夫」のような、全員に当てはまる時間の基準はありません。

アルコールの睡眠への影響は、「何時間前に飲んだか」だけでなく、どれだけ飲んだかにも左右されるからです。

2025年のメタ解析でも、飲酒する時刻と睡眠への影響は検討されています。

ただし、対象となった研究の多くは就寝前3時間以内の飲酒で、同じ量のアルコールを「寝る1時間前」「3時間前」「5時間前」のように比較した研究は十分ではありませんでした。

そのため現在の研究から、「就寝○時間前までなら、睡眠への影響はなくなる」とは決められません。

 

一方、考え方はシンプルです。

睡眠を優先したい夜は、寝る直前まで飲まない。
飲むなら量を抑え、できるだけ早い時間に飲み終える。

 

早く飲み終えれば、就寝までに体内のアルコール濃度が下がる時間を長く取れます。

ただし、アルコールが体内から減っていく速さには個人差があるため、「3時間空けたから大丈夫」「アルコールが抜けたから睡眠への影響もゼロ」とは考えない方がよいでしょう。

 

寝る前のビールについては、時間だけで安全ラインを探すより、「今日はどれだけ飲むか」を一緒に考える方が実用的です。

 

では、ノンアルコールビールならどうなる?

ここで話を二つに分けます。

アルコール0.00%なら、エタノールによる睡眠への作用は切り離せる

普通のビールから0.00%のビールテイスト飲料へ置き換えれば、エタノールは摂取しません。

したがって、ここまで説明してきたアルコール摂取そのものによるレム睡眠への影響や鎮静作用を避けるという意味では、違いは明確です。

ただし、「アルコールを摂らない」ことと、「ノンアルコールビールに睡眠改善効果がある」ことは別です。

ここは混同しない方がいいでしょう。

 

ノンアルコールビールを飲むと、よく眠れる?

実は、このテーマを直接調べた研究があります。

2012年、交代勤務・夜勤をする健康な女性看護師17人を対象に、夕食時に333mlの0.0%ノンアルコールビールを14日間飲んでもらう研究が行われました。

ノンアルコールビールを飲まなかった期間と比較すると、眠りにつくまでの時間は、

20.5分 → 12.0分

に短くなりました。

夜間の身体活動量も減少しています。

 

数字だけを見ると、かなり興味深い結果です。

さらに2014年には大学生30人を対象に、最初の7日間を対照期間、その後14日間を夕食時にノンアルコールビールを飲む期間とした研究が行われました。

こちらでも、主観的な睡眠の質や入眠時間の改善が報告されています。

 

研究者らは、ビールに含まれるホップに注目しています。

 

では、「寝る前にノンアルコールビールを飲めば、よく眠れる」と考えていいのでしょうか。

まだ、そこまでは言えません。

 

ノンアルの睡眠研究は面白い。でも、まだ小さい

先ほどの研究には、かなり大きな限界があります。

  • 2012年の研究は17人。
  • 2014年の研究も30人です。

さらに、

  • ノンアルコールビールと見た目・味をそろえたプラセボ飲料との二重盲検比較ではない
  • 介入前と介入後を比較するデザインが中心
  • 特定の集団を対象としている
  • 2012年研究ではビール・健康に関する情報機関から研究資金の提供を受けている

といった点があります。

※2012年論文では、資金提供者は研究設計・解析・出版判断には関与していないと記載されています。

 

「面白いシグナルはある。でも、ノンアルコールビールに睡眠改善効果があると結論づけるには弱い」というのが妥当な評価でしょう。

 

ノンアルについては、0.00%ならアルコールを摂取しないという事実と、
ノンアルそのものが眠りをよくするかもしれないという仮説を、
分けて考える必要があります。

前者は明確です。

後者は、まだ研究途上です。

 

睡眠のためにビールを飲む必要はない。でも、ビールを楽しむ夜まで否定する話ではない

厚生労働省は、睡眠薬代わりにアルコールを使う「寝酒」を勧めていません。

研究を見ても、その理由は理解できます。

アルコールによる鎮静で眠くなることと、一晩の睡眠構造が保たれることは同じではないからです。

一方で、これは、「夜にビールを飲んではいけない」という話でもありません。

ビールを楽しみたい夜もあるでしょう。今日はアルコールを飲みたい、という日もある。

ただ、「明日は早い」「今日は睡眠を優先したい」「一日の終わりにビールらしいものは飲みたいけれど、今日はアルコールまではいらない」という夜もあります。

そんなときには、

  • 飲む量を減らす
  • 早い時間に飲み終える
  • その日はアルコールを飲まない
  • 0.00%のビールテイスト飲料に置き換える

という選択肢があります。


 

「ビールらしい一杯を楽しむこと」と「アルコールを摂ること」は、必ずしもセットでなくていい。

夜の一杯は残しながら、アルコールだけを外す。

それも一つの選択です。

 

まとめ:「眠れたか」だけではなく、一晩の中身を見る

アルコールと睡眠について、現在の研究から特に重要なのは3点です。

1.比較的少ないアルコールから、レム睡眠への影響が確認されている。

2025年の27研究のメタ解析では、低用量からレム睡眠の減少が確認され、飲酒量が増えるほど影響も大きくなりました。

 

2.「寝つきが早くなる」が明確だったのは高用量だった。

少量のお酒まで「寝つきをよくする」と一般化できる結果ではありませんでした。

 

3.ノンアルコールビールの睡眠研究には興味深い結果があるが、まだエビデンスは限定的。

小規模研究では入眠時間などの改善が報告されていますが、「ノンアルを飲めばよく眠れる」と結論づけるには研究が足りません。

 

 

お酒を飲むと眠くなる。

その感覚自体は不思議ではありません。

ただし、見るべきなのは、布団に入ってから眠るまでの数分だけではなく、その後の一晩の睡眠です。

そして、「その夜の睡眠」ではなく、翌朝の集中力・記憶・運動能力までどう変わるのかを知りたい方は、関連記事「寝る前のビールは翌日に響く?注意力・記憶・運動への影響」で詳しく整理しています。

 

参考文献

  1. Gardiner C, Weakley J, Burke LM, et al. The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults: A systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews. 2025;80:102030. DOI: 10.1016/j.smrv.2024.102030.

  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」

  3. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」

  4. Franco L, Sánchez C, Bravo R, et al. The Sedative Effect of Non-Alcoholic Beer in Healthy Female Nurses. PLoS ONE. 2012;7(7):e37290. DOI: 10.1371/journal.pone.0037290.

  5. Franco L, Bravo R, Galán C, et al. Effect of non-alcoholic beer on Subjective Sleep Quality in a university stressed population. Acta Physiologica Hungarica. 2014;101(3):353–361. DOI: 10.1556/APhysiol.101.2014.3.10.

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