ビールを飲むと血圧は上がる?1日1缶でも影響するのか、研究から解説

公開: 更新: 執筆・編集: アストローカ創業者

ビールに含まれるアルコールは、習慣的に飲むほど血圧を上げる方向に働きます。

 

では、5%のビールを350ml、毎日1缶くらいなら大丈夫なのでしょうか?

 

現在の研究では、「1日1缶までなら血圧には影響しない」とは言えません。

2023年、7つの長期追跡研究・19,548人をまとめたメタ解析では、純アルコールを1日12g摂る人は、飲まない人と比べて、長期的な収縮期血圧、いわゆる「上の血圧」が平均1.25mmHg高くなっていました。

5%ビール350mlに含まれる純アルコールは約14g。かなり近い量です。

 

ただし、ここで「1缶でも危険」と考えるのも違います。

1.25mmHgという差は小さい。普段の上の血圧が120mmHgなら、集団平均としてのスケール感は120と121.25の違いです。一回の血圧測定だけで気づけるような差ではありません。

重要なのは、研究で「ここまでは血圧に影響しない」という明確な境界が見つからなかったことです。

アルコールと血圧の関係は、一定量を超えた瞬間に危険になる「崖」というより、少量から緩やかに傾斜していく坂道と考える方が近そうです。

 

そして、お酒を飲む量を減らすことで、血圧は比較的早めに改善が始まります。

研究を元に、詳しく見ていきましょう。

ビール1日1缶でも、血圧への影響は「ゼロ」とは言えない

先ほどの2023年のメタ解析では、参加者を4〜12年間追跡しています。

その結果、1日の純アルコール摂取量と、その後の収縮期血圧の変化には、ほぼ直線的な正の関連が見られました。

非飲酒者と比べると、

  • 純アルコール12g/日:収縮期血圧が平均 +1.25mmHg
  • 純アルコール48g/日:収縮期血圧が平均 +4.90mmHg

でした。

ここで注意したいのは、この数字が、「今日12g飲んだら、明日の血圧が1.25mmHg上がる」という意味ではないことです。

普段からその程度飲んでいる人と飲まない人を長期間追跡したときに見えた、集団平均としての長期的な差です。

 

だから、5%ビール350mlを1缶飲んだ翌朝に血圧計を見ても、この差を確認できるわけではありません。

しかし逆に、「350mlを1日1缶程度なら、血圧にはノーダメージ」とも言えません。

少量では影響は小さい。しかし、ゼロとは確認されていない。

この捉え方が一番正確です。

 

350ml、500ml、2本では純アルコール量がこれだけ違う

血圧について考えるとき、「ビールを何本飲んだか」だけでは少し情報が足りません。

重要なのは純アルコール量です。

おおまかには、飲料量 × アルコール度数 × 0.8で計算できます。

5%ビールなら、

飲む量 純アルコール量
350ml 約14g
500ml 約20g
350ml × 2本 約28g
500ml × 2本 約40g

となります。

350mlを1本から2本に増やせば、「たった1本増えただけ」に見えても、純アルコール量は14gから28gへ倍増します。

血圧への影響も、1本目まではゼロで、2本目から突然始まるわけではありません。

飲む量が増えるほど、坂道の上へ進んでいく。

そのイメージの方が研究結果には合っています。

 

「何本までならセーフ?」に、はっきりした答えはない

では、何本までなら血圧的に安全なのでしょうか。

残念ながら、現在の研究からこの量までは血圧への影響がない」と言える安全ラインは設定できません。

2024年には、23のコホート研究をまとめ、飲酒量と高血圧の新規発症を調べたメタ解析も発表されています。

純アルコール12g/日を基準にすると、高血圧発症の相対リスクは、

純アルコール量 相対リスク
0g/日 0.89
12g/日 1.00
24g/日 1.11
36g/日 1.22
48g/日 1.33

でした。

男性では、調べられた飲酒量の範囲でほぼ直線的に高血圧リスクが上昇しています。

もちろん、この表も、「24gまでは安全で、24gを超えた瞬間に危険」という意味ではありません。

むしろ逆です。

少ない量から関連は見え、飲酒量が増えるほど差が大きくなる。

だからこそ、「安全な本数」を一本の線で決めるのは難しいのです。

 

「適量」と「血圧への影響ゼロ」は別の話

ここは混同しやすいところです。

日本高血圧学会のJSH2025では、高血圧を管理する際の飲酒量について、純エタノール量で男性20〜30ml/日以下、女性はその約半分を目安としています。重量に直せば、男性ではおよそ16〜24g/日です。

しかしこれは、「24gまでなら血圧に影響しない」という安全保証ではありません。

高血圧管理のために設定された実用上の目安と、「影響がゼロになる量」は別です。

この違いは覚えておいた方がよいでしょう。

 

酒を飲んだ直後は、むしろ血圧が下がることがある

アルコールと血圧について調べると、少し奇妙な現象に出会います。

酒を飲んだ直後には、血圧が下がることがあるのです。

32件のランダム化比較試験、767人をまとめたCochraneレビューでは、純アルコール14〜28g程度を摂取すると、6時間以内には平均で、

  • 収縮期血圧:−5.6mmHg
  • 拡張期血圧:−4.0mmHg

となりました。

30gを超える高用量でも、最初の6〜12時間は血圧が下がっています。

ところが13時間以降になると逆転し、高用量では、

  • 収縮期血圧:+3.7mmHg
  • 拡張期血圧:+2.4mmHg

となりました。

 

心拍数は、アルコール摂取後ほぼ一貫して増加しています。

つまりアルコールは、時間によって作用が変わります。

  • 飲酒直後→ 血管が広がり、一時的に血圧が下がることがある
  • 時間が経過→ 血圧が上昇方向へ転じることがある
  • 習慣的な飲酒→ 長期的には平均血圧が高くなる方向

という関係です。

だから、酒を飲んだ後に血圧を測って普段より低かったとしても、「自分は酒を飲んだ方が血圧が良くなる」とは判断できません。

 

ビールは、日本酒やハイボールより血圧に悪い?

「ビール 血圧」で調べている方には、もう一つ重要な答えがあります。

少なくとも血圧については、ビールだけが特別に悪いとは考えにくい。

 

2025年に『JACC』へ掲載された日本人の大規模研究では、58,943人、延べ359,717回の健診データを解析しています。

飲酒を始めた人では、摂取量が増えるほど血圧が上昇。

反対に、飲酒をやめた人では血圧が低下しました。

そして、

  • ビール
  • ワイン
  • ウイスキー
  • 日本酒
  • 焼酎

を酒種別に調べても、血圧変化の方向はほぼ同じでした。

たとえば、1日10g分のビールをやめた場合の収縮期血圧低下は平均約0.96mmHg。
ワインでは約0.84mmHg、ウイスキーでは約0.92mmHg、日本酒では約0.81mmHg、焼酎では約1.05mmHgでした。

 

多少の数値差はありますが、「ビールだけが突出して悪い」という結果ではありません。

 

20年以上前の日本人男性4,335人を対象にした研究でも、酒種による血圧差は、総アルコール摂取量などを調整すると消失しています。

血圧を考えるなら、何を飲んだかより、純アルコールを何g摂ったか。

まずはこちらを見る方が実用的です。

 

IPAや高アルコールビールでは「1本」が同じではない

特にクラフトビールを飲む人は、容量だけでは判断できません。

同じ350mlでも、

アルコール度数 純アルコール量
3% 約8g
5% 約14g
7% 約20g
8% 約22g

です。

8%のIPAを350ml飲めば、純アルコールは約22g。

5%ビールなら550ml程度を飲むのとほぼ同じ純アルコール量になります。

血圧を気にするなら、今日は1本だけ」ではなく、「何mlを何%で飲んだか」を見る方が正確です。

 

酒を減らすと、血圧はいつから下がる?

ここには比較的はっきりした答えがあります。

意外と早いです。

JSH2025では、飲酒量を制限すると、1〜2週間で血圧低下が観察されると整理されています。

「血圧のために酒を減らしても、何か月も続けなければ変化が分からない」というわけではありません。

血圧は減酒に対して比較的短い期間でも反応し得る指標です。

 

※もちろん、全員が2週間後に目に見えて下がるわけではありません。
もともとの飲酒量、元の血圧、食事、体重、運動、薬などによって変化は異なります。

 

減らしたら、どれくらい下がる?

減酒の効果は、もともとどれくらい飲んでいたかで大きく違います。

36試験、2,865人をまとめたメタ解析では、もともと1日2杯以下だった人では、さらに減酒しても統計的に明確な血圧低下は確認されませんでした。

一方、2杯を超えて飲んでいた人では、飲酒量が多いほど減酒による血圧低下も大きくなりました。

特に、1日6杯以上飲んでいた人が飲酒量を約半分まで減らした場合、

  • 収縮期血圧:−5.5mmHg
  • 拡張期血圧:−4.0mmHg

でした。

 

これは結構大きな変化です。

一方で、「毎日350mlを1本飲んでいる人がやめれば、必ず5mmHg下がる」という話ではありません。

飲酒量が少ない人では、そもそも期待される変化も小さくなります。

ただし、最新の日本人約5.9万人の研究では、比較的少ない飲酒量でも変化が捉えられています。

飲酒をやめた人では、1日10g減るごとに、

  • 収縮期血圧:約 −0.92mmHg
  • 拡張期血圧:約 −0.82mmHg

の変化が関連していました。反対に、飲酒を始めた人では1日10g増えるごとに、収縮期約+0.78mmHg、拡張期約+0.53mmHgでした。

少量の減酒なら、完全に血圧に無関係なのではなく、変化が小さいため見えにくいと捉えるのが、妥当ではないでしょうか。


※これはランダム化試験ではなく観察研究なので、数字をそのまま「酒10gの効果」と断定することはできません。

 

完全に酒をやめなくても、減らすことには意味がある

血圧が気になるからといって、「これまで通り飲む」か「一生禁酒する」かの二択で考える必要はありません。

血圧について重要なのは、純アルコール摂取量を減らすことです。

たとえば5%ビールなら、

  • 500mlを350mlにする
  • 2本を1本にする
  • 毎日ではなく飲まない日を作る
  • 2本目だけ0.00%に置き換える

だけでも、純アルコール量は減ります。

介入研究でも、特に飲酒量の多い人では、完全禁酒でなく減酒でも血圧低下が確認されています。

 

酒そのものを悪者にする必要はありません。

血圧という観点だけで考えれば、摂るエタノールを減らせば、その分だけ血圧への要因を一つ減らせる。というシンプルな話です。

 

0.00%ビールなら血圧についてどう考える?

0.00%のビールテイスト飲料なら、通常のビールのようにエタノールを摂取しません。

そのため、エタノールによる血圧への作用は避けることができます。

 

一方で、「ノンアルコールビールを飲むと、直接的に血圧が下がる」とまでは言えません。

ノンアルコールビールと血圧を調べた研究はありますが、現時点でノンアルコールビールそのものを降圧手段として勧められるほどの根拠はありません。

血圧という観点では、「ビールらしい一杯は飲みたい。でも今日はエタノールまで摂る必要はない」という日に、0.00%へ置き換える。

それだけで、通常のビール1本分の純アルコールを摂らずに済みます。

 

高血圧の人はビールを飲んでもいい?

すでに高血圧がある人については、「何本までなら大丈夫」と一律には決められません。

とくに普段の飲酒量が多い人では、減酒による血圧低下も大きくなる傾向があります。

すでに高血圧で治療を受けている人や降圧薬を服用している人は、自分で薬や治療方針を変更せず、飲酒について主治医や薬剤師に確認してください。

 

まとめ:血圧へのアルコールの影響は「崖」ではなく「坂道」

「酒は血圧に悪い」。

それだけなら、すでに知っている人も多いでしょう。

研究を詳しく見ると、もう少し具体的に理解できます。

5%ビール350mlには、純アルコールが約14g含まれます。

それに近い12g/日という比較的少ない飲酒量でも、長期研究では、非飲酒者より収縮期血圧が平均1.25mmHg高いという関連が確認されています。

1mmHg程度は、一回の血圧測定ではまず分からない小さな差です。

 

だから「1缶飲んだら危険」という話ではありません。

しかし、「1日1缶なら影響ゼロ」とも言えません。

 

現在の研究では、血圧に影響しない明確な飲酒量の境界は確認されていないからです。

血圧へのアルコールの影響は、ある量を超えた瞬間に落ちる「崖」ではありません。

 

少量から始まり、飲酒量とともに少しずつ傾斜が大きくなる坂道です。

そして、その坂道は逆方向にも進めます。

飲酒量を減らせば、血圧は1〜2週間程度でも変化し始めることがあり、とくに飲酒量が多い人ほど改善余地も大きくなります。

次にビールを飲むときは、「今日は何本飲んだか」だけではなく、容量 × アルコール度数から、純アルコールを何g摂ったかを一度見てみる。

血圧が気になる人にとっては、それが自分の飲み方を考える、かなり実用的な物差しになります。

 

主要参考文献

Di Federico S, et al. Alcohol Intake and Blood Pressure Levels: A Dose-Response Meta-Analysis of Nonexperimental Cohort Studies. Hypertension. 2023.

Cecchini M, et al. Alcohol Intake and Risk of Hypertension: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Nonexperimental Cohort Studies. Hypertension. 2024.

Tasnim S, et al. Effect of alcohol on blood pressure. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2020.

Roerecke M, et al. The effect of a reduction in alcohol consumption on blood pressure: a systematic review and meta-analysis. Lancet Public Health. 2017.

Suzuki T, et al. Blood Pressure After Changes in Light-to-Moderate Alcohol Consumption in Women and Men: Longitudinal Japanese Annual Checkup Analysis. JACC. 2025.

Okamura T, et al. Specific alcoholic beverage and blood pressure in a middle-aged Japanese population: the HIPOP-OHP Study. Journal of Human Hypertension. 2004.

日本高血圧学会. The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025).

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